八百長疑惑でスペイン検察当局から告発されている日本代表ハビエル・アギーレ監督(56)が、アジア杯オーストラリア大会(来年1月9日開幕)に臨むメンバーに熱弁を振るった。29日、千葉県内でアジア杯に向けた国内合宿をスタート。練習前の宿舎でのミーティングで、八百長への関与を強く否定し、「サッカーに関する裏切りはしない!」と断言した。日本協会の大仁邦弥会長(70)も選手たちに指揮官の現状説明を行った。

 「灰色」の現状を吹き飛ばすかのような口調だった。八百長疑惑で告発されているアギーレ監督は「八百長には関与していない。サッカーに関する裏切りはしない!

 このミーティング後は、サッカーの話だけしよう。アジア杯に集中しよう」と選手に熱弁を振るった。

 スペイン検察当局から提出された告発状がバレンシア裁判所に受理されれば、いよいよ本格的な捜査の対象となる。27日の「弁明会見」でも、身の潔白を主張しながら、肝心の金の流れについては口を閉ざした。煮えきれない状況…。選手が抱える不安を吹き飛ばすために強いメッセージが必要だったのかもしれない。

 ミーティングの冒頭では、異例のシーンがあった。日本協会の大仁会長が八百長疑惑の現状説明を行ったのだ。都内の宿舎にハイヤーで到着した会長の手には、説明文の原稿のように見える紙があった。5、6分をかけて「今までの経緯と現状を説明した。選手に『質問ありますか?』と聞いたら、なかった。ここから先はアジア杯。サッカーに集中してほしいとお願いした」と振り返った。協会トップの後押しが、指揮官の熱弁につながった。

 2連覇がかかるアジア杯の1次リーグ初戦パレスチナ戦(1月12日、ニューカッスル)まで残り2週間あまり。常に「八百長疑惑」が監督につきまとう。大会期間中の公式会見で、他国メディアから疑惑についての質問が出る可能性が十分ある。それでも「どうなるかは行ってみないと分からない。ただ、私は戦える。アジア杯で優勝したいと思っている。それが全て。報道の方々の仕事を尊重しつつ、私はアジア杯に向けて集中するだけです」と、笑みすら浮かべる余裕を見せた。

 さまざまなタイプの国と対戦するアジア杯。試合間隔が短い時があり、真夏のオーストラリアの暑さも日本にとっては障害になる。さらに八百長疑惑による騒音。「気候が、ピッチが、という言い訳はできない。選手の質もあるし、時間もある。相手に敬意を払いつつ、全て勝ちにいく」。アギーレ監督は、自身にまとわりつく疑惑の雲を勝つことで払拭(ふっしょく)できるか-。【菅家大輔】