ヤットにお任せ!

 日本代表MF遠藤保仁(34=G大阪)が、指揮官の八百長問題で揺れる日本代表を引き締める。10年前のアジア杯中国大会で、反日感情の渦に打ち勝って優勝した経験をアギーレジャパンに還元する。常に冷静さを失わないクールな男が、国際Aマッチ148試合の実績を生かし、自己3度目のアジア杯優勝を引き寄せる。

 八百長騒動は気にならない。29日、千葉県内でアジア杯オーストラリア大会(来年1月9日開幕)に向けた国内合宿初日。大仁会長が宿舎までわざわざ出向き事情を説明するなど、代表歴の浅い選手は、動揺しかねない状況にも、遠藤は、ひょうひょうとしていた。「特になんにも感じないですね。今日、急に言われればビビるけど、ここまでいっぱい報道されてきたからね」と気に留めなかった。

 10年前を思い出す。日本代表のユニホームを着て初めて挑んだアジア杯中国大会。日本協会が配布した冊子の中の地図に、中国と台湾が違う色に塗られていることから、中国メディアが激高した。騒動はアッという間に中国全土に広まり、反日感情がピークに。日本代表は行く先々で石やペットボトルを投げられた。その中で、チームは一致団結し、優勝した。

 遠藤は当時、初戦からフル出場し、快進撃の立役者になった。しかし、準決勝のバーレーン戦で前半40分に一発退場になった。当時24歳の若手ボランチは、中国との決勝戦を罵声が飛び交うスタンドで観戦した。大会後「仲間に感謝しています。もっと成長して今後は自分がチームを引っ張れるような選手になりたい」と振り返り、成長の糧にした。

 今後、バレンシアの裁判所が告発状を受理すれば、再び騒動は大きくなる。代表活動中にぼっ発する可能性が高いが「自分のコンディションを整えることで頭がいっぱいで、八百長問題は気にならない。気持ちの問題だから。他の選手も気にしないと思うよ。もちろん(他の選手から)聞かれれば、体調管理が先だってアドバイスするけどね」。

 W杯ブラジル大会は、コンディション調整に失敗して息切れした。今回は寒い日本から、暑いオーストラリアへの移動となり、体力消耗は激しいはず。その経験から「周囲の雑音を封じて、いい体調で自分としてはアジア杯3度目の優勝を目指しますよ」と、ベテランならではの余裕の笑みを浮かべた。【盧載鎭】