<アジア杯:日本4-0パレスチナ>◇1次リーグD組◇12日◇ニューカッスル

 2連覇に向けて不満の圧勝発進-。スペイン時代の八百長疑惑で告発されたハビエル・アギーレ監督(56)が率いる最初の国際大会で、日本(FIFAランク54位)は、初戦で初出場のパレスチナ(同115位)に大勝した。個々の技術で上回って圧倒したが、4点目を奪った後半4分以降はミスからピンチを招くなど無得点。アギーレ監督は時折大きなアクションで不満をあらわにし、試合後の会見では笑顔を見せなかった。第2戦は16日にブリスベンでイラクと対戦する。

 時間の経過とともに、アギーレ監督の不満は増大していった。終了間際、右からMF香川が上げたクロスが誰もいないファーサイドに飛ぶと、ピッチに背を向けてベンチのカベにもたれかかった。終了の笛が鳴ると、真っ先にベンチを出て、パレスチナベンチに向かった。「最も良かったのは、勝ったことと勝ち点3を取れたこと。楽なゲームではなかった」とシンプルにまとめた。

 試合後の会見ではニコリともしなかった。途中から退場者が出て10人になった相手に、1点しか取れなかった後半の戦い方に不満を示した。「10人になってから(相手の)守備が向上した。4点取って勝つのは珍しいが課題はある。後半はミドルシュートが足りなかった。早い時間帯に4点目が取れたことで、プレー強度が落ちた」。風上の後半でこそ生きるはずのミドルは少なく、打っても枠を大きくそれた。7、8日と2日連続して特訓したクロスからの得点は、ショートコーナーからの吉田の1点だけ。中で待つ選手の動きが少ないことに加え、クロスに工夫はなく、放り込んでははね返される単調さだけが目立った。

 試合前には、これまでで最長の30分近くのミーティングを行った。会見では「相手に敬意を払うこと、初戦が大事だということを話した」と簡潔に言ったが、恐れていたのはFIFAランク115位の格下相手への油断だった。「試合開始からプレーの強度を高め、絶対に油断するな」と強い口調で繰り返し、気持ちを引き締めたという。

 前回王者として受けて立つ必要などない。初戦の入り方、戦い方が今大会を左右すると位置づけ、圧倒することを求めた。だから前半8分の遠藤の先制点、同25分に岡崎が追加点を決めた時も何度か手をたたいただけ。本田がPKを決めてもポケットに手を突っ込んだまま微動だにしなかった。

 自身の八百長疑惑がくすぶる中、初の公式戦が幕を開けた。この日は疑惑についての質問はなかったが、より厳しい追及も予想される。監督業の重圧について「みなさんの仕事のストレスと変わりません。重圧との共存は慣れています。中国の故事で『問題が起きて解決法があれば心配しても仕方ない。解決法がなければ、それも心配しても仕方ない』という言葉もあるほどですから」と話す。目標にかかげる連覇へ向け、長い戦いは始まったばかりだ。【高橋悟史】