W杯ブラジル大会1次リーグ敗退からの再建を託され、昨年8月に就任したハビエル・アギーレ監督(56=メキシコ)は異例の短期政権に終わった。日本協会は、八百長疑惑の告発状がスペインのバレンシア裁判所に受理されたことを2日深夜に確認し、今後の代表活動に大きな影響が及ぶと判断した。アギーレ体制の約半年は無に帰し、強化は振り出しに戻った。

 日本サッカー協会の大仁邦弥会長(70)は無念さをにじませ、会見場に現れた。三好豊弁護士を伴って着席。その表情には疲れの色もにじんでいた。「アギーレ監督の手腕を高く評価しており、受理されないことを願っていましたが大変残念な結果に終わった」と切り出した。

 大仁会長

 最大の使命はW杯出場。何としても出場しなければならない。今回の受理で捜査が始まり、起訴され裁判が始まる可能性がある。W杯予選へ影響が出ないように、リスクを排除する必要があると考えた。契約の解除理由は代表活動への影響を避けたいもの。八百長に関与した事実は確認されていないので、それが理由ではない。

 解任理由は八百長疑惑そのものよりも、今後、裁判所へ呼び出されることなどで、W杯予選への影響を避けるためと強調した。午後2時、大仁会長自らがアギーレ監督に電話し、解任を伝えると「やむを得ない」と同意したという。

 受理を確認したのは、日付が変わる3日午前0時ごろ。スペイン在住のアギーレ監督の顧問弁護士から連絡を受けた。代表活動への影響を考え、午前中に役員が話し合い解任を決めた。1月中旬にスペイン紙で告発状受理の報道があったが、それは事実ではなく、正式な受理は1月30日だという。アギーレ監督が1月28日にアジア杯の報告に訪れた際、大仁会長は「受理されたら厳しい状況になることを理解してほしい」と伝えていた。

 14年8月11日に年俸180万ユーロ(約2億4300万円=金額はいずれも推定)で2年契約しており、順調に契約が実行されれば16年8月までに約4億8600万円が支払われる予定だった。大仁会長は契約に関し「守秘義務がありお答えできないが、違約金などはない」と語った。なお、監督とともに就任した外国人コーチ3人も解任する方針。

 昨年8月11日の就任会見から176日。くすぶり続けた疑惑は告発状受理に至り、解任せざるを得なかった。昨秋の強化試合やベスト8に終わったアジア杯と、これまでの活動は水泡に帰した。6月からのW杯ロシア大会アジア予選を見据え、3月の親善試合は若手発掘の場としたが、その計画も頓挫しかねない。

 日本協会は後任の選定を急ぐが、3月の親善試合は代行監督の可能性も残す。ロシアへの強化策は、前代未聞の暗転で振り出しに戻った。

 ◆短命政権

 アギーレ監督は、日本代表初采配の14年9月5日ウルグアイ戦から最後の指揮試合となった15年1月23日UAE戦まで10試合。その期間は140日。Jリーグが創設された93年以降に日本代表監督を務めた指揮官としては、ファルカン監督の142日を更新する「最短命政権」となった。Aマッチ10試合はファルカン監督の9試合に次ぐ少なさ。なお、Jリーグ創設以前には、渡辺正監督の9日(80年にAマッチ3試合)という記録があるが、同監督は病に倒れての辞任だった。