【シンガポール12日=木下淳】手倉森ジャパンが、アギーレ流を柔軟に踏襲する。リオデジャネイロ五輪アジア1次予選(3月27日開幕、マレーシア)を1カ月半後に控えたU-22(22歳以下)日本代表が当地へ到着。夜の初練習から暑熱対策をスタートした。八百長騒動でA代表のアギーレ監督が解任された後、初の代表活動。新指揮官が未定のため、当面は前体制の方針を参考に指導していく。

 アギーレ氏の解任から9日。次期監督問題が話題を独占する日本から5330キロ離れた地で、U-22代表が今年初の活動を行った。到着48時間後の明日14日にU-23シンガポール代表と対戦する弾丸ツアー。それまで3回しかない練習で、手倉森誠監督(47)は「目的は頭の整理。コンセプトを理解させたい。所属クラブのキャンプで体は追い込まれているので戦術中心になる」と説明した。そのコンセプトとは本来、A代表を頂点にU-22から下の世代別代表まで統一されるもの。だが解任で白紙になっている。

 急に方針転換する時間はなく、今回のミーティングも「1月のアジア杯を参考にする」。攻撃のフィニッシュの部分を中心に「いい場面、育成年代にも共通する課題を抽出して映像にまとめている」と前体制の反省から入った。

 今月2日には、育成年代の指導者が約8時間に及ぶ討論会議を行った。「霜田技術委員長の下、Aから下のカテゴリーまでが何をすべきか、すり合わせた。決定力、勝負強さ。勝ちにつなぐ個人戦術に落とし込まないといけない」と確認。手倉森監督とアギーレ氏の最後の会話も「リオ世代の『個』を今回の遠征で伸ばしてきてくれ」。新監督が決まるまで、前監督の半年間の「遺産」を相続する。

 システムも柔軟に対応する。前体制は「4-3-3」が基盤で、U-22代表も昨年9月の仁川アジア大会(韓国)を同システム中心に戦った。そこは今後の体制次第だが「起用する選手に応じ4-3-3、4-4-2、4-2-3-1を使い分けたい」。手放せば無駄になると思っている。

 気温30度のシンガポール到着から約3時間後、チームはさっそく初練習を行った。手倉森監督は円陣で「今日から本大会でメダルを取るまで1つも負けられない」。42日後に始まる予選へ、日本サッカー界を襲う逆風に立ち向かっていく。