後任監督の始動は「ザック方式」も視野!?

 日本サッカー協会の大仁邦弥会長(70)は13日、八百長疑惑の告発状受理で解任した前日本代表ハビエル・アギーレ監督の後任人事について、就労ビザの取得が間に合わず、指揮が執れない状況でも、3月下旬の親善試合2試合までに決めたい意向を示した。その場合、10年9月のザッケローニ監督のように指揮官はスタンド観戦し、監督代行が指揮を執る。現在、後任の第1候補のルチアーノ・スパレッティ氏(55=前ゼニト監督)サイドと近日中に交渉に入る見込みだ。

 八百長疑惑による日本代表監督解任、緊急の後任人事…。この異常事態に大仁会長は、シンガポール出発前の羽田空港で取材に応じ、新たな方策を示した。

 「3月の親善試合にビザを間に合わせるために『これでいいや』とはしたくない。ただ、ビザが間に合わなくても3月の試合に(後任決定を)間に合わせたいとも思う」

 就労ビザ取得が間に合わなくても、後任人事が親善試合までに決まれば、新監督は日本代表を直接視察することが可能だ。まさに、10年8月29日に契約にサインしたものの、ビザ取得が間に合わず、同9月上旬の親善試合2試合はスタンド観戦した4年半前のザッケローニ監督のパターン。当時は原強化担当技術委員長(現専務理事)が監督代行を務めた。大仁会長は「間に合わない場合もいろいろと対策は考えている。(ザッケローニ監督のように監督代行を置く形も)あると思います」と話した。

 後任人事の状況を見ながら、必要になれば監督代行を決める意向で「日本人スタッフになるかな」としており、技術委員らが務めることになりそうだ。ただ、たとえ新監督が指揮できないとしても、3月の親善試合前に後任を決める意味は大きい。Jリーグや日本代表の親善試合2試合を直接視察できることで、W杯2次予選に向けて選手の特徴を把握するなどの準備時間が増えるからだ。

 現在、霜田強化担当技術委員長が渡欧中。後任の第1候補にスパレッティ氏、第2候補にラウドルップ氏を置き、近日中にスパレッティ氏との交渉がスタートする模様だ。日本協会関係者によると、第3候補に挙がっていたマガト氏(前フラム監督)は指導法などを考慮され、候補者リストから外された。そのため、スパレッティ氏、ラウドルップ氏との交渉が失敗に終わった場合、元鹿島監督のオリベイラ氏(現パルメイラス監督)がリスト最上位に浮上する可能性もある。

 6日の技術委員会後に霜田委員長は「可能なら3月7日のJリーグ開幕に間に合わせたい」と明言。一方で大仁会長はこの日「3月に間に合わなくても、6月から始まるW杯アジア2次予選には間に合わせなければ」とも話した。限られた時間の中で一進一退の交渉となるだけに、さまざまな結論を想定して、この難局を乗り切るしかない。

 ◆ザッケローニ監督の始動

 10年8月31日に就任会見を都内で行ったが、就労ビザが間に合わず、9月4日のパラグアイ戦(1-0、日産ス)、7日のグアテマラ戦(2-1、長居)の2試合はスタンドのVIP席から「観察」に徹した。原強化担当技術委員長(当時)が代行指揮した試合内容はびっしりメモに書き残し、「23人のキャラクターを知ることができた。大変満足している」とコメントした。9日にイタリアへ一時帰国し、17日にスタッフを引き連れて再来日すると、Jリーグの視察を重ねた。そして10月8日のアルゼンチン戦(埼玉ス)に1-0と勝利し、見事に初陣を飾った。

 ◆ルチアーノ・スパレッティ

 1959年3月7日、イタリア・チェルタルド生まれ。現役時代はセリエC(3部)で守備的MFでプレー。監督としてはエンポリ、サンプドリア、ベネチアなどを経て02年に2度目のウディネーゼ監督に就任。04-05シーズンに4位で欧州CL出場権を獲得。05-06シーズンから指揮したローマでイタリア杯に2度優勝。ロシアリーグのゼニトでは10年、11-12年(秋春制に移行したため)に連覇した。

 ◆ミカエル・ラウドルップ

 1964年6月15日、デンマーク生まれ。ユベントス、ラツィオ、バルセロナ、Rマドリードなどで活躍。96~97年には神戸に在籍。デンマーク代表では104試合で37得点。監督としてはデンマークのブロンビーでリーグ優勝、スウォンジーではイングランド・リーグ杯を制覇。スウォンジーを14年2月に解任され、同年6月からレクワイヤ(カタール)監督。

 ◆オズワルド・オリベイラ

 1950年12月5日、ブラジル生まれ。大学卒業後の75年、フィジカルコーチとして指導者の道を歩み始め、カタール、ジャマイカ代表コーチなどを歴任。元ブラジル代表のルシェンブルゴ監督のアシスタントコーチを務めた経験を生かし、99年にコリンチャンス監督に就任。翌年には世界クラブ選手権を制した。07~11年まで鹿島監督で、現在はパルメイラス監督。