リオデジャネイロ五輪を目指すU-23(23歳以下)日本代表の手倉森誠監督(48)が、出場権を獲得した場合に24歳以上の特別枠、オーバーエージ(OA)3枠の一部を使わない私案を持っている。12日に開幕したリオ五輪最終予選を兼ねるU-23アジア選手権で、OA枠の行使が必要なくなるほど選手が成長することに期待。一方でFW本田らA代表の主力が五輪出場に立候補したくなるようなチームを目指す。

 手倉森監督が、信念と期待を胸にドーハの決戦を迎えた。12日の公式会見。意気込みを聞かれると、真っ先に言った。「日本の未来となる、この世代を鍛え上げる大会にしたい。集中開催、過密日程。タフだからこそ若い世代を高めてくれる」。最終予選でも揺るがない育成方針を口にした。

 かねて「五輪のメダルより大事なことは、A代表の核になる選手を育てること」と強調してきた。そのため、本大会出場を決めてもOA枠の一部を使わない考えがある。「ロシアW杯に向けた強化に必要なら行使する。でも最終予選を突破する過程で、この世代がものすごく成長したら。OAは必要なくなるかもしれない」と話したことがある。

 過去の五輪を見て、そう思った。北京大会は大久保嘉人が候補だったが、クラブ事情で断念。本田圭や岡崎が大舞台を踏んでA代表の核になった。ロンドン大会は遠藤保仁の招集が実現しなかったことで、山口がA代表に台頭したからだ。

 一方で、立候補にも期待する。リオ五輪の開催国ブラジルは、FWネイマールが15年1月に「チームの一員になって貢献したい」と参加意思を表明。同6月にはU-21欧州選手権でスウェーデンが五輪切符を獲得し、FWイブラヒモビッチが「チャンスがあるのに出ないわけがないだろう」とコメントした。当時、手倉森監督は「北京組の本田や香川、ロンドン組の清武らA代表の軸が『もう1度、五輪でメダルを取るチャンスをくれ』と手を挙げたくなるくらい、この世代を魅力的なチームにしたい」と発言。最終予選で、見合ったチームにするつもりだ。

 もちろん、OA枠の選考に本腰を入れるのは予選を突破してから。先のことを考えれば足をすくわれることも分かっている。その中でOA放棄に値する若手は出てくるのか、可能性を感じさせるチームに成長できるのか-。選手の大化けに期待する大会が始まった。【木下淳】