日本が1次リーグ3戦全勝を飾った。既にB組首位通過を決めていた日本は、2-1でサウジアラビアに競り勝った。第2戦から先発10人を変更。主将マークを巻いたMF大島僚太(22=川崎F)が前半31分に先制点を、MF井手口陽介(19=G大阪)も後半に追加点を挙げ、相手の反撃を1点に抑えた。6大会連続10度目の五輪出場を目指す日本は、22日の準々決勝でA組2位のイランと激突する。大会3位までが本大会出場権を得る。

 ゴールまで思い描いた軌道を一直線に、シュートがたどっていった。心地よい風が吹く前半31分、MF大島が持ち前のテクニックで1人かわした。身長168センチ。普段はおとなしい性格。だが振り抜いたシュートはネットに突き刺さるまでの28メートルの間、誰にも触れさせることなくブレながらゴール左上隅へ突き刺さった。「イメージ以上のゴール。きれいに決まったかなと思います」。MF遠藤に代わって主将マークを左腕に巻いた男は、誇らしげに言った。

 アジアでのリベンジが自分に課した使命だ。主将を務めた14年仁川アジア大会(韓国)。0-1で敗れた準々決勝韓国戦で決勝点につながるPKを献上した。川崎Fでは元日本代表MF稲本を押しのけ、入団3年目に定位置を奪取。今季から背番号10を任された。アギーレジャパン時代からA代表候補にリストアップされた逸材だが、このアジアで借りを返したかった。

 勝負強さのかたまりだ。静岡学園高3年の時、夏の高校総体まで全くの無名だった。左足甲を2回骨折しており、プロは諦めて大学進学を決意。センター試験を申し込んだ。しかし、4強入りしたU-18(18歳以下)高円宮杯のプレーが川崎Fの向島スカウトの目に留まり、急きょ練習参加。事実上の入団テストはわずか2日間だけだった。既に川崎Fは選手獲得を終えていたが、自慢の個人技を披露。5日後に「満場一致」で獲得の吉報が届いた。一発勝負の入団テストで実力を発揮した。この強心臓を五輪最終予選でも見せつけた。

 昨季は川崎Fの先輩FW大久保から厳しい要求を受け続けた。シュートの意識が足りず「怖がるな!」と怒鳴られた。しかし、楽しみも覚えていた。「自分の性格的に、その方が伸びていくと思う」。元日本代表の先輩の期待に自分らしく応えようとした結果、クラブでも代表でも代えのきかない選手になった。

 負けられない決勝トーナメントが始まる。「ここからは負けたら終わり。(五輪連続出場を)途絶えさせられない責任がある。その責任を果たしたい」。五輪切符を手にするその時まで、その小さな体で立ちはだかる敵と、のしかかる重圧と闘い続ける。【小杉舞】

<大島僚太アラカルト>

 ◆生まれ 1993年(平5)1月23日、静岡市清水区生まれ。

 ◆競技歴 小学1年から船越SSSでサッカーを始める。静岡学園中から同高に進学。高校3年時の全国高校総体16強。県高校選手権優勝、MVPを獲得。高円宮杯全日本ユース4強。11年に川崎F入り。

 ◆プレースタイル 昨季のJ1では4位のパス数を記録。中盤の底で前後左右にパスを散らすボランチ。

 ◆Jリーグ出場歴 新人だった11年5月7日の神戸戦でJ1デビュー。昨季はJ1で28試合に出場し無得点。J1通算97試合3得点で、リーグ戦でのゴールは12年を最後に3年間なし。

 ◆代表歴 12年U-19アジア選手権に出場。A代表に招集歴があるMF柴崎らと同学年だが、早生まれのためU-23代表入りの資格を持つ。

 ◆サイズ 身長168センチ、体重64キロ。