手倉森ジャパンがリオ切符をつかみ取った! 勝てば最終予選突破が決まる日本がイラクを2-1で下し、6大会連続10度目の五輪出場を決めた。

 FW久保裕也(22=ヤングボーイズ)は、先制点を決めると全速でベンチへと駆け、ピッチ脇の仲間の輪に飛び込んだ。前半26分。FW鈴木のドリブル突破からのラストパスに反応。「(鈴木)武蔵からいいボールが来たので僕は合わせるだけでした」と言うが、難しいシュートだった。決めたのは25・5センチの右足。サッカー選手としては大きくない足で、正確に決めた。

 久保家に宿る闘争心を大一番で発揮した。柔道、剣道、空手に精通する父と、合気道をしていた母の間に生まれた。格闘技一家。「厳しい父親だったので1秒たりともグレる時間がなかった」。5歳からサッカー一筋。最初はDFだったが同じ山口・鴻南中のMF原川と公園でボールを蹴って感覚を磨き、点取り屋になった。

 19歳で京都からスイスへ渡った。当初、自主練習も禁止。「隠れてやるしかない。だから芝生の庭のある家を選んだ」。午前練習の後、午後は自宅の庭で壁に向かって蹴る。ボールは昨季欧州リーグで2得点した時のもの。同リーグ1試合2得点は日本人では岡崎慎司以来2人目の“記念球”。「記念だから使っているんです」。蹴り込んできた感覚がものをいった。

 ひたすらサッカーとだけ向き合う。将来はイタリアへのステップアップを思い描いている。「セリエAに行くためにスイスに来たようなもの。国柄もサッカーも好きだし、あの守備をこじ開けたい」。世代最強といわれたイラクを倒し、五輪への道をこじ開けた。「あと1勝してチャンピオンになって帰りたい」。欧州のスカウトも集うリオへの扉を開いた。【小杉舞】