優勝したU-23(23歳以下)日本代表の快進撃を支えた人がいた。「本当にあの人がいてくれたおかげです」。選手が口をそろえて感謝の思いを伝えるのは、A代表専属の西芳照シェフ(53)だ。今大会は約1カ月の長期遠征に同行し、ホテルの調理場から食でサポートした。

 「腹が減っては戦が出来ぬ」と言うが、これまでのアジア遠征で現地の食事に選手の箸が進まないことが多かった。手倉森監督が14年のU-19アジア選手権を視察した際も、日本人の口に合わなかった。「食事に虫が入っていた」(MF南野)という環境を見て指揮官は「恵まれている日本人がいきなり海外に来て変な飯を食ってハングリーになれ、と言われても非現実的」と感じ、西シェフの同行が決まった。

 基本の食事はホテルのバイキングコーナーだが、メニューがあまり変わらない。その反対側の列に西さんの料理が必ず3品は並ぶ。試合後は絶品カレーライスをほおばる。MF矢島は「海外遠征の度に何キロか痩せていたけど、今回は太っちゃうので自主規制するくらい」。DF岩波も「アジアの試合は70分で足がつったこともあった。120分戦えたのは西さんのご飯があったから。グラウンド以外で支えてくれる人のためにも勝ちたいと思った」と興奮気味に話した。

 負ければ終わりだった準々決勝を突破した翌23日は西さんの誕生日だった。感謝を込めて全員で誕生会を開催。日本協会の大仁会長と田嶋副会長も「西さんの貢献度が大きかった」とうなずいた。食の力と感謝の思いが相まってリオへの道は切り開かれた。【小杉舞】