<アジアCL:鹿島1-1アデレード(オーストラリア)>◇準々決勝第1戦◇17日◇カシマ

 鹿島がまさかの「ホームの洗礼」を浴びた。アデレード(オーストラリア)をホームに迎えた準々決勝第1戦は、猛攻を仕掛けたが、荒れたピッチで伝統のパスサッカーの威力が減退。選手の疲労度も倍増した。前半38分に先制点を許し、同ロスタイムにDF内田が幸運なオウンゴールを誘って追いついたが、1-1の均衡を打ち破れないままドローに終わった。アウェーゴールを献上する劣勢の状況で、24日にアウェーでの第2戦に挑む。

 慣れ親しんだはずのピッチが恨めしかった。芝がめくれ、土がむき出しの部分が点在した。そんな荒れ果てた戦場が容赦なく体力を奪う。勝ち越し点を狙った後半ロスタイムには、もう動けなかった。スローインに誰も動き出せない。パワープレーを狙ったロングフィードも前線への上がりが遅く、プレーを始められない。時間は刻々と過ぎ試合終了が告げられた。

 DF岩政が影響を説明した。「下が緩んでいる中で、中3日の連戦。相手も単純に身長が大きいとかではない。太いというより『ぶとい』。上半身も下半身も疲れ方が違う」。相手の平均身長は約2センチ差の182・1センチだが、体重では約7キロ差の81・6キロ。肉厚の高いカベは想像以上の疲労度を招いた。

 それだけに空中戦を避け、地上戦に持ち込みたかった。だが凸凹の芝がそれを許してくれなかった。足へのダメージは大きく、DF新井場は右太もも裏に違和感を訴えて前半で交代。この試合に向けて温存していたMF本山も13日の川崎F戦後に右内転筋痛を訴え、欠場した。影響は否定できない。

 7月下旬から芝が悪化の一途をたどった。「サマーパッチ(夏の斑点)」と呼ばれる特効薬のない病気がまん延。猛暑の今夏は芝の温度が最高42度まで上昇し、ゲリラ豪雨が降り続き、病気が拡大した。「使わない方がいい」と言う選手もいたが、天皇杯県大会などの行事や、重要な一戦を前にした非公開練習のために、試合日以外でも使用せざるを得なかった。

 敵将のビドマー監督は来日後に「芝にガッカリした」と口にしたが、チーム関係者は「オーストラリアはラグビーと兼用の会場が多いから慣れている」と気にしなかった。皮肉にもホームの逆転現象が生まれた。

 準々決勝はアジアサッカー連盟主催の大会で過去5回中3回もはね返された鬼門。ホームの芝には牙をむかれたが、幸いにも第2戦のアウェーの芝は抜群の状況だという。MF小笠原は「アウェーで勝ちに行く状況は楽しみ」と逆境を歓迎した。【広重竜太郎】