<アジアCL:川崎F2-1名古屋>◇23日◇準々決勝第1戦◇国立

 2年ぶり2度目の出場の川崎Fが日本代表MF中村憲剛(28)の活躍で、2-1と名古屋との準々決勝第1戦に逆転勝ちした。前半28分に先制されて迎えた後半15分、中村が壁の間を鋭く抜くスーパーFKを決めて追いつくと、同18分には再び中村が決勝ゴールの起点となった。初出場の07年には同じ準々決勝でPK戦の末に敗れた川崎Fは、4強がかかる30日の第2戦(瑞穂)に向けて優位に立った。

 中村が鋭い弾道のFKを右足で蹴ると、その先に立ちはだかった2枚の壁が、ふっと開いた。ボールはそのまま、GK広野をあざ笑うようにゴール左隅に吸い込まれた。「壁が割れようが割れまいが、あのコースは狙ってました」。

 後半15分、ゴール左前約18メートル。目の前には壁があり、ファーサイドにはFW鄭らが待ちかまえていた。普通ならファーを狙って蹴るところを、GKや守備陣の位置取りを瞬時に確認し、計算ずくでニアに蹴った。「あれでスイッチが入ったね。いけるという気持ちになった」。3分後には、ゴール前に強引に切り込み右足アウトサイドでシュート。こぼれ球をDF森がゴール前に上げ、FWジュニーニョの決勝弾へとつながった。

 絶対に許したくなかったアウェーゴールを奪われ、悪くなりかけた流れを1人でひっくり返した。今月の欧州遠征でガーナから1ゴール奪うなど、日本代表でも存在は輝くが、「すべてにおいて高めないと」と妥協はない。欧州で日本で感じられない強さや高さを体感したが「日本でも、プレーの精度を高めたりとか、自分を詰めることはできるし、そういう戦いの場はある」と言い切った。その言葉を、視察した岡田監督の前で証明した。

 FKを決めた後、スタンドに向け右手を大きく突き出した。その先には25日に満1歳になる長男龍剛(りゅうご)君がいた。昨年9月27日に同じ国立で行われた柏戦で、前半37分に右足でFKを決め、誕生2日後の息子にプレゼントした。1年後、今度は誕生日2日前に、早めの誕生プレゼントを贈った。「国立には何かあるのかな?

 毎年1回決めるよね。やりやすいよ」。こぼれる笑みは、いつもよりも輝いていた。【村上幸将】