今季はJ2が熱い。昨季8位の岡山が、昨年までチバスUSA(MLS)に所属した元日本代表DF加地亮(35)と、タイのテロ・サーサナから岩政大樹(33)を補強した。J1昇格争いはもちろん、経験と実績のある「W杯組」や「元代表組」にも注目だ。

 「このクラブを変えたい。よりプロらしく、より責任感あるチームにする。それが僕の役割です」。練習を見学するサポーターの数は、片手で足りるほど。決して注目されているとは言えないJ2の岡山に、DF加地が加わった。ジーコジャパンの不動の右サイドバックとして、06年W杯ドイツ大会に出場。G大阪でも08年のACL制覇、08、09年度の天皇杯2連覇など数々のタイトルを手にした。

 昨年6月にG大阪を離れ、海外移籍という夢を米国でかなえた。だがチバスUSAが半年もたたずに解散。移籍先を探したが見つからなかった。「米国にこだわりたかった。日本に帰る気がなかったからJのクラブからは声がかからなかった」。正月が明け、無所属になる危機に立たされた時に岡山に誘ってもらった。

 05年まで所属した東京時代のコーチだった長沢徹監督(46)が岡山を率いていたことも、帰国を決断する理由だった。G大阪時代のように恵まれた環境ではないとは覚悟していたが、想像を超えていた。クラブから昼食に配られるのは仕出し弁当。ユニホームも数年前までは選手自ら洗濯していて、現在も練習着以外の手袋やタオルなどは個人持参だ。

 「最初はタオルを忘れてきて、シャワーが浴びられないこともありました。弁当は質だけでなく、量も少ない。J1に上がるのもそうだけど、しっかりとしたクラブの土台を作るために訴えていきます」。同じく今季から10年W杯メンバーのDF岩政もタイから加入。経験と実績を伝えるだけでなく、やることはたくさんある。【益子浩一】