歴史的な初勝利の瞬間を松本イレブンは静かに迎えた。約3000人のサポーターによる、チームスローガン「ワン・ソウル(思いは1つ)」が響く中、今村主審の長い笛が鳴った。J1、J2通算200勝目の反町康治監督(51)は「ほんの数年前までこういう舞台で勝利を味わうことはできなかった。本当によくやった。胸を張って対等に戦えた」と秘めた思いを明かした。

 J1初勝利を決めたのは主将のDF飯田真輝(29)だ。前半19分、FW池元のシュートのこぼれ球を右足で押し込んだ。JFL時代の10年に東京Vから加入。12年に参入したJ2の第3節(3月17日)北九州戦で決勝ゴールを決めた。J2初勝利に続き、J1初勝利にも貢献。「ボールが来ると信じていた」と振り返った。

 後半は圧倒的に攻め込まれたが、最後まで走り、体を張った。開幕戦で2点差を追いつかれた経験を糧に無失点。DF田中は「成長しているか分からないけど、進歩はしている。これが、最後まで諦めない自分たちのスタイル」。

 目標の「15位以内」に向けて厳しい道のりは始まったばかりだ。先発11人中、J1での戦いを経験しているのは5人。「満足したら、勝てなくなる。通過点にしないといけない」。選手たちにJ1の厳しさを説いてきた田中に笑顔はなかった。【保坂恭子】