サッカーJ1東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が、プレミアリーグの名門チェルシーから正式オファーを受けたことが8日、分かった。東京の大金直樹社長(48)が認め、今夏にも移籍する可能性が出てきた。昨季日本代表に定着するなど大ブレーク。今季も開幕から3得点し、ハリルジャパンで起用される逸材が、名将モウリーニョ監督の目に留まった。複数の欧州クラブも調査を進めており、東京残留も含め争奪戦に発展しそうだ。

 プロ2年目を迎える武藤に、ビッグニュースが届いた。サッカーの母国の名門チェルシーから、正式オファーを受けたことを東京の大金社長が認めた。首と腰を痛めている武藤はこの日の午前、練習試合を行ったチームとは別にリハビリメニューで調整。今日9日から合流する予定で、異例のオファーを「今は東京でプレーすることに集中したい」と冷静に受け止め、12日の次節・湘南戦に照準を合わせているという。

 昨季後半戦で一気にブレークし、代表に定着したとはいえ、国際舞台での実績は少ない。何よりも3月に慶大を卒業したばかりだ。プロ入りからクラブと代表を合わせて公式戦18得点。その中で、ダイナミックで規格外のプレーに、タレント軍団のチェルシーを率いる名将モウリーニョの心を射止めたと思われる。

 プレミアリーグは日本人選手にとって狭き門となっている。英国の労働ビザ取得には過去2年間の代表戦出場率75%以上が条件。さらに今夏からはFIFAランク平均70位以内から同50位以内へ引き上げられ、ただでさえ高いハードルが、今夏からさらに上がる。現在アーセナルからトウェンテへ期限付き移籍中の宮市は、条件を満たさなかったが特例措置でプレミア入り。また「エクセプショナルタレント枠」という才能豊かな人物に対してビザを発給する制度もある。代表出場数11試合の武藤にとって現実路線と言える。

 チェルシーは11-12年に欧州CLを制したビッグクラブ。チェルシー関係者によると武藤の場合、友好関係にあるオランダリーグのフィテッセに期限付き移籍する選択肢もあるという。コンスタントに出場機会を得られる場所からステップアップしていくことができる。また、チェルシーは今夏日本ツアーを行う計画が進行中。同関係者はツアーから合流し、モウリーニョ監督のもとでプレーして、方向性を決める可能性も明かした。

 今後はクラブ間で移籍金などの交渉を行うことになる。すでにチェルシー以外にも複数の欧州クラブが調査を進めており、並行してビッグオファーが届く可能性もある。日本のワンダーボーイが今夏、移籍市場の話題を独占しそうだ。

 ◆武藤嘉紀(むとう・よしのり)1992年(平4)7月15日、東京・世田谷区生まれ。松丘小時代はバディSCに所属。中学から東京U-15深川でプレーし、ユース昇格。慶応高卒業時にトップ昇格の選択肢がある中で慶大進学。14年にサッカー部を退部して東京とプロ契約。昨季は33試合13得点、今季は4試合3得点。日本代表では国際Aマッチ11試合1得点。179センチ、72キロ。血液型A。

 ◆チェルシー 1905年創立。本拠地はロンドン・スタンフォードブリッジ。イングランドの1部リーグで優勝4度。03年にロシアの大富豪アブラモビッチ氏が買収し、世界屈指の資金力を持つクラブに変身。モウリーニョ監督の就任した04-05年シーズンは、50季ぶりのリーグ制覇を達成し、翌シーズンも優勝して連覇を達成。欧州CLは11-12年シーズンにクラブ初の優勝を成し遂げた。07年9月に退任したモウリーニョ監督はインテルミラノ、Rマドリードを経て、昨季から復帰。現在チームは1試合消化が少ないながらも、2位アーセナルと勝ち点差7で首位に立っている。

 ◆プレミアリーグの就労ビザ イングランド・サッカー協会(FA)はEU(欧州連合)以外の選手がプレミアリーグに移籍するルールを制定している。現在は、過去2年間のFIFAランキングが平均70位以内の国と地域で、代表戦の出場率75%以上が条件。だが、この5月以降は同ランキング50位以内に引き上げられ、さらに登録メンバー25人のうち、非EU選手の枠を現行の17人から13人に減る。過去の日本人では元日本代表DF三都主がビザを取得できずに移籍が見送られたことがあった。アーセナルから期限付き移籍しているオランダ1部トウェンテFW宮市やサウサンプトンDF吉田は特例でクリアした。また、通常枠とは別の「エクセプショナルタレント枠」は将来有望な若手選手に与えられるもの。