マインツへの移籍を決断した東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が、決勝点を決め祝砲をあげた。1-1の後半23分に自身が得たPK直前、震度4の地震でスタジアムが揺れるハプニング。勝てなければ発表見送りの可能性がある中、うろたえずに決めた。試合直後に場内アナウンスという異例の形で移籍が発表された。東京での出場は、第1ステージ(S)終了まで残り3試合。

 異例の事態に、武藤は心を落ち着かせた。後半21分、時刻は午後8時27分だった。ドリブルで倒され、自らPKを得た直後。味スタ周辺で震度4の地震が起こり、スタジアム全体が揺れた。異例の事態に場内アナウンスが流れ一時中断。約2分間の間に「緊張感が余計増しました」。覚悟を決めて蹴り込んだシュートは、柏GK菅野の左をはじいた。

 勝って、移籍を報告したかった。今月のゴールデンウイークまで優勝争いを演じながら、ここまでリーグ3連敗。置き土産にしたかった第1ステージ優勝から1歩後退していた。「発表することは聞いていたから、勝ちにつながるゴールを決めれば最高の形になると思っていた」。序盤から仕掛ける。前半32分の先制点は、裏へ抜け出し得意のドリブルから左サイドで起点となって演出した。

 試合後は、スッキリとした表情になって言った。「最初から高望みして自分に合っていないチームより、自分に合ったところ。誠意を見せてくれて、必要としてくれた気持ちを踏まえてマインツにしました」。3月上旬にチェルシーからオファーが届き、海外移籍が現実味を帯びた。4月に入って猛アプローチを仕掛けてきたマインツ。「チェルシーはビッグクラブなので悩みました。眠れない時期もあったり、サッカーに集中できないときもあった」。シュミット監督の「君が必要なんだ」という言葉が決め手となった。

 新たな舞台に「世界でも名の知れた選手になりたい」と上を見据え「引退するときはFC東京」とクラブ愛を口にした。リーグ戦は残り3試合。まだ優勝は消えていない。「何かきれいなことをするのではなく、泥臭くチームのために走る姿を見せたい」。可能性ある限り最後まで走り抜ける。【栗田成芳】