浦和の太陽が、霧雨そぼ降る敵地のピッチで強く輝いた。1-1の後半14分。浦和MF柏木陽介(27)はMF武藤、李と立て続けにワンツーパスをかわしつつ、ゴール正面に進入した。「前の選手を追い抜いていけば、いい形になると思っていた。すごくきれいなゴールちゃいますかね」。最後は鳥栖GK林の鼻先で、浮き球を頭で押し込んだ。

 今季初得点で、苦しい展開を打ち破った。前半からチームは、鳥栖守備陣の圧力に苦しんだ。前半22分に鳥栖DF吉田が2回目の警告で退場しても、流れは変わらない。柏木が「なぜか分からないけど、慌てていた。ああそうやろうなあという分かりやすいパスばかり。何を怖がっていたのか」と言う通り、中央でキープしてからサイドに展開する、今季の得点パターンはみられず、逆に相手に先制を許した。

 ハーフタイムには、選手たちはペトロビッチ監督から「就任以来3年半で、最も良くない」と盛大な雷も落とされた。それを受け止めつつ、柏木はすでに、後半の打開策を考えていた。FW興梠らをうながし、中央で起点になるように指示。自らも前線の選手との距離を詰めて連動することで、数的優位を生かした攻撃がみられるようになった。

 終わってみれば、6得点のゴールラッシュで、鳥栖相手の敵地初勝利を飾った。柏木は「冷静に立て直せた。後半は言うことなし。今までなら、4-1あたりから失点もしたと思うけど、それもなかった。チームの成長がはっきり出た試合」と満足げにうなずいた。

 1つ不満があるとすれば、それは試合終了直後に確認した、携帯に届いたラインメッセージの数々だ。「みんな、頭でのゴールが初めてだねって言ってくるけど、オレは何度も決めてるからね!」。ともあれ、司令塔の活躍で、浦和が次々節の6月7日清水戦にも、第1ステージ優勝を決めるところまでやってきた。【塩畑大輔】

 ▼開幕連続不敗 浦和が開幕から13戦負けなしで、02年横浜と03年名古屋がマークしたJ1記録に並んだ。この日は先制されながらも逆転勝ち。これで今季の先制された試合は6試合目で4勝2分けとなった。02年横浜の不敗期間中の被先制試合は4試合(3勝1分け)、03年名古屋が3試合(1勝2分け)だった。今季の浦和は半分近くが先制点を許す苦しい試合展開だが、それに動じることなく勝ち点を積み重ねている。