「理想の崩し」の先に落とし穴があった。後半20分。浦和MF柏木陽介(27)は「ここ」とばかり、中央から縦パスを送った。これがMF武藤を経由し、ゴール前にフリーで抜け出したFW興梠の元に。東アジア杯日本代表3人による「縦、縦とつながる、これ以上ないという形」という会心の崩しだったが、シュートは甲府GK河田にはじき出された。

 するとそこから、甲府のカウンター攻撃が始まった。パス2本で、FW伊東が抜け出す形に。対応したDF岡本が、競り合いで右肩を脱臼し、独走を許す不運も手伝った。シュートを決められ、引き分けに持ち込まれた。

 柏木は「もっとファーストディフェンスを厳しくいくべきだった」と悔やんだ。約5分後には左足内転筋の違和感を訴え、ベンチに下がった。前半から痛みでキックの距離が出なかった。その分前線との距離を詰め、攻撃を組み立てる苦心のプレーだったが、勝ち点3にはつながらなかった。

 柏木は、とりあえず代表には合流。「たとえ2、3試合目だけになっても、迷惑にならなければ中国にはいきたい」と話した。

 連敗した広島、名古屋戦に続き、主導権を握りながら勝ちきれなかった。試合後には埼玉スタジアムはブーイングに包まれた。【塩畑大輔】