清水のFW鄭大世(31)が「お得意さま」から加入後初ゴールを狙う。明日29日に控えるホーム東京戦に備え、27日には静岡市内で開かれた完全非公開のチーム調整に参加し、フルメニューを消化したようだ。先発出場濃厚な鄭は川崎F在籍時、東京とのリーグ戦では6戦6発と量産していた「東京キラー」。チームの起爆剤となるゴールを目指す並々ならぬ意欲を口にした。

 自然と口調は強まった。「チャンスはあるので確実に決めたい」。鄭は並々ならぬ思いを口にした。加入時の会見では「ゴールの欲はない。チームが勝てればいい」と話していたが、チームに余裕がなくなった。降格圏を脱出できず、監督交代後も3戦勝ちなし。残り9試合で1試合も無駄にできない状況を考えれば、初ゴールがほしい。鄭は「焦っても仕方がない」と前置きした上で「今は悠長なことは言っていられない」と語気を強めた。

 これまでJ通算46ゴールで計17クラブから得点を挙げてきた。なかでも東京戦は最多の6得点をマーク中。プロ2年目には初めてハットトリックを達成した相手でもある。当時とメンバーやシステムは大きく異なるものの「相性はいい」といいイメージが残っている様子。ここまで5試合に出場し、いまだ無得点の鄭について、田坂和昭監督(44)も「打てる場面を作れている。あとは本人次第」と奮起に期待している。

 かつては相手をなぎ倒し、強引にシュートを放つプレースタイルから「人間ブルドーザー」とまで呼ばれたストライカー。ブンデス時代にはエゴイストと批判されたこともあり、時あるごとに粗削りなプレーは封印していたが「今はその感覚を取り戻そうと意識している」と「我」を出そうと必死だ。「ブレーキ」を外して原点に戻ろうとしていたゴールハンター。強引に1発をたたき込んで低迷するチームを救う覚悟をさらに強くしながらピッチに向かう。【神谷亮磨】