松本の反町監督が強行策に出たが、実らなかった。1点ビハインドのロスタイム突入直後、東京の選手が足を痛めて倒れ込んだ。東京GKブラダは持っていたボールをピッチの外へ。しかし、同監督は時間稼ぎとみなし東京へボールを返さずに攻撃に出ることを指示。MF岩上のロングスローで東京ゴール前へ放り込んだ。しかし、クリアされ4分のロスタイムを終え試合に敗れた。

 試合後の会見で、反町監督は東京のフィッカデンティ監督とのやりとりを明かした。

 「まずは中2日3連戦を組んでくれたJリーグに感謝したい」と冗談交じりに切り出すと「向こうは時間稼ぎをしていて、そのまま終われば試合を落とすことになる。後でフィッカデンティ監督にも『申し訳ないけど、やらせてもらった』と話した。あちらは勝って喜んでいたし『いいよ』と。円満解決です」

 通常、選手が倒れたら相手チームであっても試合を止めるためにボールを出し、再開した際には返すことが礼儀とされる。しかし、反町監督は時間稼ぎに対抗し、勝負に徹して強行策をとった。実際に、東京の応援スタンドからはブーイングが起こった。だが同時にベンチの前で猛抗議をしていたフィッカデンティ監督は、即座に倒れてピッチの外へ出されたMF橋本に替えて、DF吉本を投入し対応した。結果的に東京の勝利で終えたが、試合終了瀬戸際の攻防に、最後の最後まで緊張感が続いた。

 8試合連続未勝利で、年間順位16位とJ2降格圏で残留争いをする松本。チームを率いる反町監督は勝てない理由を問われ「ビシッと決められる(東京FW)前田。ビシッとクロスを入れられる(同DF)太田。その差ですかね。給料の差でしょうね」と冗談交じりに言い、見据える残り5試合。その差をうめる戦いは、佳境を迎える。