満員のスタンドから起こる「ゴンコール」が期待の表れだった。元日本代表FW中山雅史(48)が所属するJFLアスルクラロ沼津が、ソニー仙台を愛鷹競技場に迎えた一戦。中山はファンに入団の報告をし、試合後はチーム練習に加わった。「期待は本当にありがたいし確実に僕の力になる。けどまずはピッチに立たないと期待に応えられない」と言った。

 一目見ようと集まった入場者数は、JFLでは異例の8337人。同クラブ史上最多記録の2765人を、3倍以上も更新した。この試合で現役復帰をする可能性があったが、古傷の両膝の状態などを考慮しメンバー入りを回避。だがレジェンドが復帰を目指す姿がファンの心を突き動かし、足を運ばせた。

 異例の集客で今季の目標であるJ3昇格に条件面で前進。この試合でホーム平均入場者数が1592人から2555人に増えた。今節終了時点では、昇格条件の1つである「前年度の平均入場者数2000人」をクリアした。しかし、首位ソニー仙台に逆転負けを喫したチームを見守った、中山の第一声は「悔しいの一言に尽きる」。気持ちは一緒に戦っていた。

 試合後の練習では、クロスにゴール前へ飛び込み約25メートルのミドルシュートも決め、決定力を披露した。残り5試合で勝ち点5差の鹿児島を抜き4位以上が昇格の絶対条件。「チームの一員でいるなら、チームの躍進に僕がやれることをやっていきたい」。降り注ぐ復帰への期待に応えるつもりだ。【栗田成芳】

 ◆J3参入条件 JFLでJ3クラブライセンス交付が決まっているのは、現在4位の鹿児島ユナイテッド、5位のアスルクラロ沼津、6位の奈良クラブの3クラブ。さらに今季のJFLの順位で「4位以内かつ百年構想クラブのうち上位2クラブ」という条件を満たせば、来季J3への参加が認められる。第1ステージで優勝し、年間順位2位以内が決まっているヴァンラーレ八戸は、百年構想クラブに入っているがライセンスは不交付。3クラブのうちJ3参入できるのは1クラブだけとなっている。