J2磐田がアウェーで東京Vに勝利し、J1自動昇格圏内の2位を守った。前半にDF森下俊(29)が退場し、エースFWジェイ(33)が負傷交代。苦しい中、後半4分にMF川辺駿(20)が先制点を挙げ、流れを引き寄せた。8月23日ホーム徳島戦(3-1)以来10戦負けなしで勝ち点を75にし、今季3位以内が確定。3~6位チームに与えられるJ1昇格プレーオフ出場権は手にした。

 最悪の状況を川辺が打ち破った。後半4分、右サイドでMF小林祐希(23)がキープしていたボールを受けると、緩急をつけたドリブルで相手のマークを振り切った。直後、右足でゴールネット上にズドン。ゴール位置も確認しないままのいちかばちかのシュートで、「自分でいこうと思って、(右足を)振り抜いたら入りました」と振り返った。

 文字通り、値千金の先制点だった。前半24分、森下がゴール前で相手のシュートを止めるハンドで一発退場。PKも与えたが、守護神GKカミンスキー(24)が足で好セーブ。だがアクシデントは続く。今季20得点のジェイが、試合序盤から抱えていた左ふくらはぎの痛みに耐えられなくなり、同41分にFW森島康仁(28)と交代。10人でエース不在の中で、川辺も「頑張っても0-0かな」と思っていたという。

 そんな空気をハーフタイムに名波浩監督(42)がゲキを飛ばし、変えていた。「10人でも勝ち点3しかいらない」。後半、選手たちは戦士になって走り続けた。20歳でU-22(22歳以下)日本代表の川辺は、この日の先発メンバーで最年少。「11人目の選手(サポーター)の分まで走ろう」と前線まで上がったことが、得点に結びついた。

 試合後のロッカールームは、笑いに包まれた。名波監督がテレビのインタビューで「我々の息子たちはたくましい」と選手についてコメント。指揮官はその後、冷静になってミーティングで発言を謝罪し、選手たちをさらに笑わせていた。川辺は言った。「チームがまとまっているから、こういう雰囲気になると思う」。J1復帰へ残り3試合、あらためてチームの結束力が高まった。【保坂恭子】