仙台はホームで松本と対戦し勝利した。後半22分にMF富田晋伍(29)が先制点を挙げると、同36分にはDF菅井直樹(31)が追加点を決めリードを奪った。オウンゴールで1失点はしたものの、相手を圧倒した完勝で13年以来2年ぶりの8強入りを決めた。

 ピッチを強くたたき続けた雨粒のように、仙台イレブンも攻撃の雨を降らせ続けた。主導権を握り、巧みに相手を崩しながら、容赦なしに攻め立てた。後半だけで2ゴールを奪い、2年ぶりのベスト8進出を手中にした。今季ユアスタで勝利に飢えたサポーターは歓喜に沸き、イレブンの笑顔が輝いた。先制点の富田は「ホームで思うような結果を出せず、申し訳ないという気持ちだった。今日はいい結果を出せた」と胸を張った。

 試合を決めたのは菅井だった。1点リードの後半36分にゴール前で陣取り、追加点を決めた。MF梁の左CKから、FW山本が折り返した球を右足ワンタッチで決め「あれはゴールと言っていいものか分かんないな」と首をかしげたが、勝利へ導く大きな得点だった。前日「やるからにはタイトル。勝つためにもゴールは狙う」と言っていた通りの有言実行。2回戦仙台大戦に続く今大会2号は値千金の一撃となった。

 まさにチーム一丸だった。この日、仙台ベンチから背番号「5」のユニホームが飾られた。12日の練習中に右膝関節内側側副靱帯(じんたい)を損傷し全治約4~6週間と診断されたDF石川直のものだった。富田は「イシくん(石川直)の思いも背負ってやろうと」と奮起した。代わってセンターバックに入ったDF鎌田も必死に体を張り、ボランチを務めた梁は、攻守の中心としてチームを支えた。今季リーグ28戦に出場しチームをけん引してきた石川直の離脱というアクシデントも、総力戦で白星をつかみ取った。

 これで来月12月26日の準々決勝進出が決定。渡辺監督は「反省点はたくさんあるが、リーグ戦で悔しい思いをした分を天皇杯で取り戻す」と力強く言い切った。【成田光季】