新潟明訓が16年ぶり6度目の全国選手権出場を決めた。先制され、2-1と逆転し、そして追いつかれるシーソーゲームになったが、帝京長岡を下した。2-2で迎えた後半ロスタイムに、FWに転向して約3カ月の田辺大智(3年)が劇的なゴールで突き放した。全国大会の組み合わせ抽選会は今日16日に行われ、大会は12月30日に首都圏で開幕する。

 ボールがゴール右隅に吸い込まれるのを確認すると、FW田辺は応援席のバックスタンドに向かって走りだした。2-2で迎えた後半ロスタイム。田中健二監督(38)が「延長を覚悟した」タイムアップ寸前に、値千金のシュートが飛び出した。「戦車のように行く」という指揮官の言葉そのままに相手DFを振り切り、ペナルティーエリアの外から右足をボールにミートさせた。「まだ、実感が湧かない」と殊勲者は言った。

 夏のインターハイでは左サイドバックを務めた田辺がFWに転向したのは8月下旬。ボランチの加藤潤主将(3年)は「オイッ。大丈夫なのか、と思った」と振り返ったが「アイツの良さがフィットして、びっくりした」と言う。前へ、前への姿勢。身体能力。走力が前線で生きた。「サイドバックのときは、勢いよくどんどん行くのが裏目にでたけれど、前では生かされる」と本人もFWを気に入っていた。県大会5試合で6ゴール目。決勝の土壇場で決めた。

 「理屈じゃない。能力」と田辺のシュートを評した田中監督は、タレントぞろいのメンバーに大きな期待を寄せていた。「指導者として一生にあるか、ないかのメンバー。ここまでのチームは2度と作れない」とさえ考えていた。それだけに、自分自身の指導能力も磨いた。昨年4月下旬に単身でドイツ・ブンデスリーガのBミュンヘンをアポなしで訪問。初日は門前払いを受けながら10日間、育成の指導法を学んだ。「指導者は絶対に叱らなかった。褒めていた。ハッとさせられた」。

 以降は、叱って萎縮させずに伸び伸びと楽しむサッカーにチェンジした。そして、16年ぶりの選手権出場を手にした。「全国4強を目指す義務がある」と田中監督は、県勢が未経験の位置に目標を設定した。田辺は「FWとしての時間が少ないから、もっとレベルアップできる」と、全国へ意気込んだ。【涌井幹雄】