山形県の定例記者会見が11月30日、同県庁で行われ吉村美栄子知事(64)が対応した。約40分間行われた会見のうち20分間が、Jリーグ山形の社長交代劇に集中するという異例の事態になった。チームを運営する株式会社モンテディオ山形の社長が結果的に2代連続で県職員OBが続いたことにも触れ、将来的には民間からの社長抜てきも示唆し、新スタジアム構想についても言及した。

 定例会見が終盤に差しかかった10時20分過ぎ、株式会社モンテディオ山形の株を2%保有する同県の吉村知事への集中砲火が始まった。高橋前社長に対して11月上旬に辞任を打診した経緯を問われ「新体制でJ1復帰を目指して欲しいという株主の総意で辞任をおすすめした」と説明した。政治の介入ではとの問いに対しては「株主3者の総意、政治というよりは株式会社のあり方がこうなっているのをご理解いただきたい」と答えるのが精いっぱい。会見時間の半分を占める20分にわたり、社長辞任劇への質疑が繰り返された。

 突然の社長辞任に疑問を持った人も多い。再始動日の11月29日には、異例の約100人ものファンが集まった。ネット上では高橋前社長の辞任理由を求める署名が400件を超えた。サポーターとの対話が不十分ではとの問いには「J2降格はサポーターも残念に思っている。今季を総括して来季に向けて力強くスタートしてほしい」と答えた。

 株式会社化2年目で2年連続の黒字が濃厚の高橋前社長の経営手腕についても「この3年よくやっていただいた。経営というよりは、今季の総括ととらえていただければ」と同じ言葉を繰り返すしかなかった。

 今日12月1日の臨時取締役会で選任が決まり、就任会見を開く森谷俊雄新社長(61)についても質問が及んだ。吉村知事は「今回も県職員OBがなったわけですが、新社長となる方は調整力、交渉力、さまざまな力を持っている。県庁職員だった時代から見ていて、民間感覚がある方」とフォローした。さらに持論を展開し、「民間の経営者は将来的には望ましいこと。視野に入れるのは賛成」と官から民へのシフトを示唆した。

 来季に向けて、再出発する。吉村知事は「選手、監督はスタートを始めている。サポーターと意思疎通をもっとしてモンテが羽ばたけるように、新社長には取り組んでいただければ」とエールを送った。J1再昇格を狙う森谷新社長の手腕には、必然と注目が集まってくる。【高橋洋平】

 ◆元県職員からの社長就任 13年8月に株式会社化したモンテディオ山形の初代社長に高橋節氏が就任した。就任する前は県副知事を務めており、株式会社モンテディオ山形の株を49%保有する山形県スポーツ振興21世紀協会の理事長との兼務が慣例となっている。森谷新社長も県OBで、直近は同県産業技術振興機構の専務理事を務めていた。