浦和が「車懸りの陣」で、神戸の守備ブロックを破壊した。序盤は5バックシステムを敷く相手にスペースを消され、縦パスが入らず攻撃のリズムがつくれなかった。

 そこでFW興梠慎三、MF武藤雄樹、李忠成の1トップ、2シャドーがピッチ上で急きょ“評定”を行った。

 興梠によると「このままではパスが受けられないので、ローテーションでポジションを変えていこう」という結論になったという。ここから3人が交代でトップに入り、残りの2人が前線からやや下がることで神戸5バックから距離を取り、フリーになってパスを引き出す形になった。

 3人が車輪のようにクルクルとポジションを変える。マンツーマンのような形で、5トップ気味の浦和攻撃陣に食い付いていた神戸守備陣は、この戦術に幻惑された。

 浦和はここから、縦パスを次々と前線に入れ、チャンスを量産。前半22分には武藤が起点になり、李のアシストで興梠が先制ゴールを決めた。

 同25、44分の追加点も、前線3人のポジションにとらわれない動きから生まれた。興梠は「3点とも相手は浦和対策を次々と練ってくる。自分たちも工夫しないといけない。リーグ戦の悔しさを晴らすためにも」とうなずいた。

 攻守の素早い切り替えから、より高い位置でボールを奪う。そしてテンポのよいダイレクトパスで、一気に攻撃を加速させる。ペトロビッチ監督の求めるサッカーをより成熟させつつ、選手たちが自分たちで考え、アクセントも加える。

 リーグ戦では今年もあと1歩で年間優勝を逃した浦和だが、悔しさをバネに再起への歩みを始めている。どんなに固められた守備網ですら真っ向勝負で打ち破る、超攻撃的サッカーを貫いて頂点を目指す。