藤枝順心(静岡)が、2006年以来9大会ぶり2度目の優勝を飾った。過去2度優勝の神村学園(鹿児島)に3-2で競り勝った。エースFW児野楓香(3年)が厳しいマークにあう中、FW肝付萌(3年)が先制、同点弾、決勝アシストと活躍。リードした後も全員が伝統のパスサッカーを貫き、「サッカー王国静岡」の威信を取り戻した。

 緑のピッチに、藤色の花が咲いた。最高の結果をつかみ、チームメートと抱き合った黒崎優香主将(3年)の目に涙があふれた。「笑わなきゃと思いながら、いろいろなことを思い出して泣いちゃいました」。

 今大会で初めて、追う展開になった。前半3分に肝付の大会初得点で先制したが、直後に同点にされ、同41分にも失点した。焦りが出始めたが、ハーフタイムには、誰からともなく「みんなで笑って終わろうよ」と言い合った。今まで何度も口にした言葉だ。切り替えて臨んだ後半、持ち味のパスサッカーで相手を崩し始めた。同15分、再び肝付の得点で追いつくと、一気に流れが変わった。

 決勝点を挙げたのは、1年生の右サイドバック安部だった。同21分、ゴール前まで駆け上がると、肝付のパスを右足ダイレクトボレーで決めた。「ここしかないと思って、振り抜いた。チャンスで決められてよかった」。中学まではFWだったが、高校入学後にサイドバックに転向。足元の技術の高さから、すぐに先発に定着した。だが、今大会は積極的な攻撃参加ができず、多々良和之監督(51)は「いつ代えようか悩んでいた」ほどだったが、一振りで期待に応えた。

 児野が徹底マークされる中、周囲がスペースをうまく使った。2得点1アシストの肝付は「自分が動けばボールを回せると思った。最後に自分らしさを出せた」と安堵(あんど)の表情。児野は「みんなの力で優勝できました」と感謝した。

 昨年はU-17女子W杯初優勝メンバーで大会MVPのMF杉田妃和らを擁していたが、3位だった。多々良監督は「今年は全国大会に行けないかなと思ったチームで、期待値は低かった。それでも今までの積み重ねがあったから、どんな相手にも対応できた」と奮起した選手たちを評価した。

 2年前の決勝では、日ノ本学園(兵庫)に1-4で敗れた。この日は全校応援も受けて頂点に立ち、黒崎は「みんなと一緒に喜べて、リベンジを果たせたかな」とニッコリ。最後は全員でピッチ際に1列になり「ありがとうございました」と応援席に頭を下げた。藤色の花々に充実の笑みがあふれた。【保坂恭子】

 ◆静岡県勢の全国優勝(高校年代) 11年の山口国体でU-16県選抜が、少年男子決勝で千葉と0-0で引き分けて両県優勝を飾った。06年のU-16移行前は、J1磐田のMF上田康太(29)やJ2清水のDF平岡康裕(29)らを擁した04年に、千葉を1-0で下して単独優勝を果たしている。単独チームでは、06年の全日本女子サッカー選手権で藤枝順心が初優勝。男子では、00年に清水商(現清水桜が丘)が高円宮杯全日本ユースを制して以来、遠ざかっている。