仙台は20日、渡辺晋監督(42)以下、選手スタッフが今年初めて顔をそろえ、東日本大震災の被災地である石巻市の大川小学校跡地を慰問した。震災から5年目の節目の年、チームは5位以内を目標に掲げ今季をスタートさせた。

 震災から5年目を迎える今年、河川遡上(そじょう)津波被害で児童74人と教職員10人が死亡・行方不明となった悲劇の現場へ、仙台イレブンは足を運んだ。

 大波に突き破られたコンクリート壁が、当時の惨状を物語っている。津波は北上川の河口から約5キロもさかのぼり、校舎屋根をも超えた。全校児童108人のうちの7割が、さらわれてしまった。生きていれば、この日が14回目の誕生日だった娘・未捺(みな)さんの墓参りに訪れた只野英昭さん(44)が、選手らに当時の様子を語ってくれた。選手らは皆、真剣な面持ちで話に耳を傾ける。新加入のMF水野晃樹(30)は「サッカーをすることによって、見ている人たちが一時でも楽しいと思ってもらえたら。僕らが先頭を切り、スポーツとともに復興していく」と、前を見つめ話した。

 チームが去った後に1人、献花台に手を合わせた只野さん。「ベガルタは地元チームですから、復興に向けても、そしてサッカーでも頑張ってもらいたい」と優しい笑顔で活躍を期待した。チームの16年目標は「トップ5(5位以内)」。就任3年目を迎えた渡辺監督は「いま1度、復興のシンボルとして輝くためには結果を出すことが1番。(被災地を)思い続け、プレーで表現していかなければ」。宮城を所在地とするプロサッカーチームの誇りと、忘れてはならない東日本大震災の記憶とともに、16年も戦っていく。【成田光季】