横浜MF中村俊輔(37)が10色のスパイクで、プレーを“最適化”する。10日の宮崎合宿7日目の練習では、セットプレーでキッカーを務めたり、居残りで直接FKを蹴り込んだりと、得意の左足FKに磨きをかけた。このメニューを見越して、この日は「FK用」と位置付けるピンク色のスパイクを着用。ほかにも「運動量アップ用」「キック精度アップ用」など、敵地のピッチの特性にも合わせてスパイクを使い分ける。

 鎌首をもたげた猛蛇が、獲物に襲いかかるような弾道を連発した。10日の全体練習後。中村はゴール前にFK練習用の人形を立たせると、得意の左足直接FKを何発も蹴り込んだ。見守るスタッフが「えげつない」とつぶやく。その通り、球速、高低差、精度すべてが並外れていた。

 この日は前日の黄緑色から一転、鮮やかなピンク色のスパイクを着用していた。中村は「今日は全体練習でもセットプレーをやると聞いていたので、キックの威力が出やすいと感じているスパイクを履いた」と説明した。

 「戦力」と位置付けるスパイクは20足以上にもおよび、うち10足ほどを今回の合宿にも持ってきている。その1つ1つに、中村は役割を与え、シチュエーションに応じて履き分ける。

 中村 たとえば、味の素スタジアムはピッチが広いから、相対的にタッチ数よりも走行距離の方がまさる。だから運動量を上げられるように、軽めのやつを使う。逆に鳥栖は少し狭く感じるし、実際に運動量よりもタッチ数が増えるので、キックの精度が上がるものや、威力が増すものを履くようにします。

 同じ試合の前半と後半でも変える。ピッチコンディションや自分の体調の変化、さらには試合展開に応じて、スパイクでもプレーの最適化をはかる。

 中村は「実際、数字上でどれくらい違うのかは分からない。でもそうやって考えていくと、何より楽しいじゃん」と笑う。微に入り細をうがつ配慮で、サッカーを突き詰める。38歳を迎えるシーズンも、中村は理想のプレーを求めて走る。【塩畑大輔】