G大阪FW宇佐美貴史(23)が、技ありの「出直し弾」で勝利に導いた。途中出場から12分後の後半34分だった。ゴール前でMF阿部からパスを受けると、自陣に戻りながら守備につくDFとGKが重なって死角が生まれるのを待ち、右足でゴール右へ蹴りこんだ。弧を描いた先制弾が決まると、一目散にゴール裏のサポーターの元へ駆けた。これが決勝点となった。

 「サポーターは試合前のアップの時、一番初めに僕のチャント(応援歌)を持ってきてくれた。1点取って勝たせてやるしかないと思った」

 試練を乗り越えた。19日のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)水原戦。先制の好機でPKを“2回”外し、1次リーグ敗退。味わったことのない悔しさに襲われた。「これ以降(先発を)外して下さいと言いたくなるモチベーションだった」。帰宅後、宇佐美はリビングを真っ暗にして1人、自らに問い掛けた。「サッカーに対してどう向き合っていた?」。考えること約7時間。気付けば朝だった。

 「身を削るぐらい、自分が壊れてしまうぐらいサッカーのことを考える。それが自信になる。死ぬほど落ち込んだけど死ぬほど切り替えられた」

 中4日の試合で先発を大卒新人FW呉屋に譲り、今季2度目のベンチスタートだった。長谷川監督は「呉屋が良かったから」と話すが、宇佐美の発奮も願っていた。「自分がエースだと感じながらのプレーを途中からでもしてくれた」と賛辞を贈った。アジア制覇の目標を失ったG大阪が、エースとともにリーグ制覇へと再出発した。【小杉舞】

 ◆宇佐美のPK失敗 19日のACL水原戦。0-0の前半37分にPKを獲得した。通常はMF遠藤がキッカーを務めるが、宇佐美が志願。1度目はゴール左を狙いGKにはじかれたが、蹴り直しとなった。次にゴール右を狙ったが、GKにキャッチされた。“2度の失敗”が響いたチームは1-2で敗れ、1次リーグ敗退が決定した。宇佐美は泣いて同僚に謝罪した。