甲府の本拠地・山梨中銀スタジアムは、世界一安全なスタジアムと言ってもいいかも知れない。06年からスタンド最上段でAED(自動体外式除細動器)を携帯し、観客を見守っている救護ボランティアがいる。3月27日のナビスコ杯甲府-大宮戦では、一時心肺停止状態となった観客の女性を迅速な対応で救った。

 Jリーグ規約の第52条の(4)には「ホームクラブは、すべての試合において第4の審判員ベンチにAEDを備えなければならない」とある。さらに、Jクラブの資格、クラブライセンス制度にかかわるスタジアム検査要項にも、AEDについて「医務室に1台および救護室もしくは観客エリアに2台以上備えること」と記されている。

 はじまりは04年だった。厚生労働省が、非医療従事者であっても救急時の使用は医師法に違反しないとした。これを受け同年から試合での設置を決めた。さらに11年8月には、松本の元日本代表DF松田直樹さんが練習中に心筋梗塞で倒れて亡くなったことを受け、当時の大東チェアマンがクラブにAED設置の徹底などを通達。現在AEDはJ1、J2、J3の主な53スタジアムに完備。医務室に計55台、救護室及びコンコースに計132台ある。最多は、医療機器専門メーカーのフクダ電子が命名権を取得したJ2千葉のフクダ電子アリーナで計10台ある。

 ただ、医療従事者がAEDを近くに置くような形で待機する会場は中銀スタ以外にない。Jリーグ関係者は「そのような運用は他に聞いたことがない」と話している。【八反誠】