名伯楽の「最新作」が、Jのピッチに初お目見えした。

 後半28分、浦和MF伊藤涼太郎(18)が交代で出場。Jリーグデビューを果たした。まずはボランチ、後に1トップ後方の攻撃的MFとしてプレー。「すごく緊張していたので、どんなプレーをしたか、あまり覚えてません。でもすごく楽しかったです」。やわらかいボールタッチ、多彩なキックなど、攻撃面では才能の片りんをみせた。

 しかし「正直、ボランチで出るとは思わなかった。練習で慣れてはいたけど、真ん中のポジションをやるのは、最初は怖かった」と話すように、ボランチでは守備面の課題が出た。先発した柏木が、今季は対戦相手を圧倒する攻守の切り替えの速さ、ボールへの鋭い寄せをみせてきただけに、どうしてもプレーの甘さが目立ってしまった。

 ペトロビッチ監督も「守備については、監督である私が彼の分も走らなければいけない、と思うほどでした」と冗談めかしつつ、問題点を指摘した。しかし、伊藤への高い評価は変わらない。「それは日本の若い選手によくある傾向。以前はヨウスケやゲンキもそうだった。非常に技術があって、高い攻撃能力を持っている」と、日本代表に送り出した教え子の柏木や原口を引き合いに出した。

 「伊藤は才能のある選手。そして私はスロベニア、オーストリア、そして日本でも多くの若い選手を育ててきた。彼が日本を代表する選手になるには、攻撃と守備、特に守備をしっかりやらなければいけない。今年の合宿では、練習試合などで阿部とボランチを組ませた。伊藤が阿部の姿を見て、守備を学び、成長したいと思うかどうか」。

 ペトロビッチ監督は「世界サッカーのトレンド」を目指す上で、各選手が攻守に幅広い能力を持つことが重要だと考えている。

 「今のチームの中で、守備の仕事を比較的少なくできるポジションは、1つか2つというところです。今のサッカーは、全員が攻撃と守備でハードワークを求められます。伊藤が成長するには、守備を大事な課題としてしっかり取り組むことが必要。それができれば、近い将来に日の丸を背負える選手になれる」。

 広島時代から柏木、槙野など、有望な若手を見いだしては、次々と日本代表に送り出してきた。昨季は仙台でも控えだった新加入MF武藤をも、日本代表に育て上げた。屈指の目利きが見いだした、東京五輪世代の超新星。チームは今後も連戦が続くだけに、主力にまじって出場機会を得ることが期待される。