熊本地震で被災したJ2熊本が2日、熊本市内で全体練習を再開した。最後の練習となった4月15日以来、17日ぶりに全29選手が集合。まだ4人がホテル暮らしをする中、15日千葉戦(フクアリ)でのリーグ戦復帰に向けて調整した。本拠地うまかな・よかなスタジアムは支援物資の拠点となっているため、22日ホーム水戸戦を代替地の日立柏サッカー場で開催すると発表。チーム一丸でこの難局を乗り越える覚悟を固めた。

 熊本が力強く再出発した。熊本市内の練習場。近くには、壊れた屋根をブルーシートで覆う家屋や避難生活を送る被災者のテントが見える。地震の傷痕を感じつつ、全29選手がそろって動きだした。ミニゲームでは空中戦や球際で激しくぶつかりあい、シュートに体を投げ出して防いだ。失った時間を取り戻すようにボールを追い、声を上げた。

 4月16日未明の「本震」以降、10選手が避難所で生活し19選手が県外避難した。GK畑は、益城町(ましきまち)の自宅が倒壊危機にあり、一時は車中やテントで生活。24日まで体を動かす余裕はなかった。元日本代表FW巻は「回った避難所は30カ所。必死だった」。サッカーどころでなかったが、25日から一部選手で自主トレを開始。家族の安全を考慮して東京に避難したFWアンデルソンは柏、GK佐藤とFW平繁は広島、MF上原は札幌で調整していたが、1日に全員が熊本へ戻った。

 ミーティングで清川浩行監督(48)は「覚悟を持って15日の試合に臨もう。クラブや熊本のみんなが支えてくれている。恥じないよう全力で頑張ろう」と鼓舞。練習前にはピッチ中央で円陣を作り犠牲者に黙とうをささげた。最後のリーグ戦は4月9日の山口戦。試合勘やゲーム体力不足が懸念される。それでも巻は「環境の厳しい選手もいるがサッカーを通して感動、夢、希望を与えるため、言い訳はなし」と前を向いた。

 支援物資の拠点となる本拠地は使用のめどが立たず、22日のホーム水戸戦は柏での代替開催となった。池谷社長は「(地震が)忘れ去られる危惧がある。首都圏で情報発信することで、支援のお願いを続けていく象徴的な存在になれれば」と語った。余震もあるためいまだ4選手がホテル生活。28日ホーム町田戦の開催可否も分からない。困難は覚悟の上、ロアッソ熊本が「火の国」に希望の火をともしてみせる。【菊川光一】

 ◆ロアッソ熊本 05年にロッソ熊本としてクラブ創立。06年JFL昇格、08年に現クラブ名に改称しJリーグ入会、J2参加。チーム名の由来は情熱を示す赤のイタリア語「ロッソ」と、同語で「アッソ」(唯一のという意味)を含んだ造語。本拠地うまスタ(収容3万2000人)。