熊本地震のため、一時活動を休止したJ2熊本が15日、アウェー千葉戦(フクアリ)で約1カ月ぶりにリーグ戦に復帰する。全体練習は約半月休止し、リーグ戦は5試合が中止となった。ブランクによる試合勘やコンディションの低下、いずれ来る過密日程など待ち受ける「敵」は多い。それでもFW巻誠一郎(35)は、難局をチーム一丸のハードワークで乗り越える姿を見せることで、被災地を元気づけたいと不退転の決意を示した。

 熊本のリーグ復帰戦が迫ってきた。相手は千葉。巻にとっての「古巣」だ。

 巻 千葉の関係者、サポーターのみなさんには、いち早く支援物資を送っていただきました。14トンもの物資が、丁寧に仕分けされて送られて来たのを見て、胸が熱くなりました。もちろん、試合になったら全力で勝ちにいきます。リーグ戦を戦える状況にまで僕らが立ち直ったと、支援してくださった千葉のみなさんに見せることが、一番の恩返しになりますから。

 4月15日を最後に、熊本は活動を休止した。全体練習が再開されたのは今月2日。2週間以上のブランクをへて、リーグを戦い慣れた各クラブと対戦する。

 巻 個人的にはコンディションは問題ないです。10年以上プロでやってますからね。でも、他の若い選手の中には、不安がある選手もいるかもしれない。

 チームは第5節終了時点では首位。各選手の評価も上がっていた。プロとしての将来を考えれば、予期せぬブランクを機にパフォーマンスを落とし、個人的な評価を落とすのは痛い。早くコンディションを上げたいと焦ったとしても、責められない状況だ。

 巻 でも彼らは違う。今でも練習後には、一緒に避難所めぐりをしてくれる。本当に胸を打たれます。今週に入って「試合へ向け、自分のコンディションづくりを優先してほしい」と若い選手には言っています。でも森川泰臣(益城町出身)のように、まだ避難所訪問についてきてくれる選手もいる。みんな「熊本のためにできることは何か」と真剣に考えています。

 一方で、長いプロ経験を持つ巻は、熊本の今後の戦いが、決して楽なものにはならないと予見する。

 巻 今回うちだけが消化しきれなかった分の試合が、いずれ過密日程としてはね返ってくる。地元熊本でホーム戦ができるようになるのも、いつになるか分からない。各クラブの“聖地”であるホーム会場を貸していただけるのは、お礼のしようもないくらいありがたいことです。でも一方で、毎試合が遠征になるというのは、目を背けられない現実でもあります。

 それでも巻は、被災地を元気づける戦いを見せたいと、決意を新たにする。

 巻 益城や南阿蘇はもちろん、僕らは西原や御船、甲佐など報じられる機会が少ない土地でも、大変な思いをされている多くの方々にお会いしてきました。僕の実家がある宇城市も震度6強2回、震度6弱1回と、何度も激しい揺れに襲われた。たとえロアッソ熊本の今季の道のりが険しいものだとしても、心が折れてしまっては、みなさんに合わせる顔がありません。

 熊本は地震発生前まで、パスサッカーで好調な戦いをみせていた。しかし今後は苦境も待ち受ける。その中でチームが示さなければいけないもの。それは巻の代名詞でもある「ハードワーク」だと考える。

 巻 被災地では、みなさんが助け合うことで、懸命に復興を目指している。だから僕らは、うまくいかなくても、苦しくても、チームのために必死で走らなくてはいけない。それこそが、被災者のみなさんに恥じない戦いなのだと思います。過酷な連戦が待つ夏場は、きっと世間の熊本地震に対する関心も薄れてくるころでもある。そんな時こそ、僕たちは必死で走って、勝ち点をもぎ取る。そうすれば被災地のことを、全国のみなさんに思い出してもらえるはずですから。

 ◆熊本の今後の日程 千葉戦に続き、22日にはホーム扱いの水戸戦を開催する。しかし、本拠地うまかな・よかなスタジアムは安全確認が完了していないため、柏の本拠地・日立柏サッカー場での開催となる。その後も熊本開催のメドは立っていない。熊本はJ2の中で唯一、震災の影響で5試合を未消化。その分をリーグ戦の間に組み込んで消化していく必要がある。4月29日に予定された山形戦(NDスタ)は7月6日に行われる。