J2札幌が水戸を1-0で下し、首位に再浮上した。0-0の後半36分に途中出場のFW内村圭宏(31)が決勝ヘッドを決め、守備陣も奮闘し、11年以来5年ぶりの4連勝。4試合連続完封勝利はクラブ初となった。12試合で8勝2分け2敗の勝ち点26。前節熊本戦が中止となり3位に落ちていたが、町田、C大阪が敗れたため、1試合未消化の中、再び首位に立った。

 FW内村が鬱憤(うっぷん)を晴らす一撃で、4連勝に導いた。後半16分にFWヘイスに代わり出場。同36分、FW都倉からパスを受けると左のMF堀米に展開し、再びゴール前に進入した。「ここっていうところにクロスが来た」。DFの背後から忍び入り、ペナルティーエリアに入った瞬間、一気に加速すると、ニアサイドに飛び込み、豪快にヘッドでたたきつけた。

 これで5戦3発。チームで最も好調な男だけに、4戦ぶりベンチスタートには、歯がゆさもあった。「本当は最初から出たい気持ちはあるけど、チームとしての戦い方があるから」。前半15分にFWヘイスが絶好機を外し、そのまま0-0の均衡が続く嫌な展開だった。俺が決める-。出場直後から野獣のような形相でボールを追いかけ、流れを呼び込むと、シュート1本で決定的仕事をやってのけた。

 内村の特長を生かす四方田監督の策が、的中した。結果が出ている点取り屋を引き続き先発で使うのはセオリーも、水戸のDFラインが低く守備的だという分析結果から意表を突き、ベンチスタートに変えた。「前半はお互い、大きいチャンスができない可能性がある。そこで内村の体力を消耗させるより、後半に使う方が効果的と考えた」と指揮官。計算通り、疲労した水戸DF陣を、内村のスピードが翻弄(ほんろう)した。

 4月17日山形戦での今季1号も途中出場弾。自身のクラブ記録を更新する札幌在籍51号となったが、先発は47点で、途中出場は計4点しかない。そのうち2点を今季記録している。「年のせいかもしれないけど、昔よりもスピードの使いどころや、メリハリの付け方が分かってきた」と言う。先発でも4月29日徳島戦で決勝弾。31歳ベテランは、経験を重ね、どんなタイミングからでもスイッチを入れられる術を身に付けていた。

 首位再浮上にも、手放しで喜ぶことはない。11年最終戦、自身の2ゴールで昇格を決めた。勝負はギリギリまで分からないと、経験から分かっている。「紙一重で勝てているだけで、ちょっとしたことで変わる。そうならないように、常に良い準備をしていきたい」。頼もしい13番は、J1昇格の時まで、気を緩めることはない。【永野高輔】

 ◆札幌のリーグ戦連続完封勝利 これまでは10度あった3試合が最長で、4試合(4月23日1○0C大阪、同29日1○0徳島、5月3日1○0金沢、同15日1○0水戸)はクラブ新記録。4試合連続1-0も初で、過去に07年5月3日仙台戦~同19日水戸戦の3試合連続があった。