浦和DF槙野智章(29)が特注「赤い糸」で、試合への最終調整を万全にする。16日の練習後、検査機器メーカーのコスモ計器のスタッフと、練習場の一角で打ち合わせ。同社の技術を援用してつくられたトレーニング器具「Ex tube(エクスチューブ)」について、用途にあわせた微調整を要望した。

 この器具は、トレーニングパートナーと腰同士をゴムのようなチューブでつなぎ、後方に引っ張られながら前方に走ることで走力アップをはかるもの。槙野は試合前日の練習後、これを使ったダッシュを繰り返し、足の筋肉にスピード感を加えて調整の仕上げとする。

 筋力アップが目的ではない分、チューブの強さは控えめでよいとする一方で、腰に固定するハーネスの強度は必要だとした。そうした機能面での細かい注文に加え、槙野は「色を赤くすることはできるんですか?」と提案。担当者は「確認が必要ですが、おそらく前向きに話を進められるはずです」と請け負った。

 槙野が「赤」にこだわるのには理由がある。先週、筆頭株主の三菱自動車と、横浜の筆頭株主である日産自動車との資本提携が明るみに。1社が2クラブの運営に影響を与える状況が、Jリーグ規約に抵触するとの見方もあり、チームの身売りやチームカラー変更の可能性まで報じられた。

 これを受け、浦和の淵田社長が「浦和は赤のままで戦う」と断言した。しかも、18日のアジアチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦FCソウル戦は、赤がチームカラーのクラブ同士の対戦になる。「浦和の赤に染め尽くせ!」というキャッチコピーで集客作戦がスタートするなど、いつも以上にチームカラーがクローズアップされる状況になっている。

 だからこそ、槙野も思わず細部の「赤」にこだわった。プライベートでは「女友達は多いのですが…」と苦笑いで「赤い糸」の存在を否定するが、チームメートやクラブとは赤く固い絆で結ばれている。

 FCソウル戦は大会屈指の好カードと目される。勝ち抜けば07年以来の大会制覇へ、大きな一歩になる。「赤い糸」でトレーニングパートナーを引っ張るように、槙野がアジアの頂点を目指す赤きイレブンを、力強くけん引する。