浦和MF柏木陽介(28)が、肉体改造の成果で「華麗なタクト」と「どう猛なプレス」を両立させる。

 25日のアジア・チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦、FCソウルとの第2戦に向け「最近のうちは、前線の選手が疲れて相手を追えなくなる時間が、以前より長くなっている」と前線からのプレスの重要性を説いた。

 「そうなれば、後ろの選手も前にプレッシャーをかけにいけない。まずは前からプレッシャーをかけられる形は、つくっていかなあかんかなと。攻守の切り替えの意識も足りてなかったりする。ボールの奪われ方、守備のところで、以前より少しずつ意識が足りなくなっている気もする」

 今季は早い攻守の切り替えでボールの再奪取を繰り返し、相手を敵陣に押し込む「ミシャ・プレス」が猛威をふるい、1次リーグでは前回大会王者の広州恒大さえ敵陣に押し込めた。しかしここに来て、Jリーグの大宮戦、新潟戦と、プレスの威力が低下した試合が続いた。

 18日のFCソウルとの第1戦を前に、ペトロビッチ監督は厳しい言葉で、選手たちに奮起を促した。これもあって、猛プレスがよみがえりだした。この日の公式練習でも、11対11のハーフコートゲームで、攻守の切り替えの意識を強めるための指示が続いた。

 この試合は特に「ミシャ・プレス」本領発揮が必要な試合にもなる。第1戦では後半、FCソウルが前線に196センチFWシム・ウヨンを投入。定評のあるパスサッカーをかなぐり捨て、ロングボールを当て続ける現実的な戦術に出てきた。

 浦和はこれで押し込まれ、FWズラタンをDFラインに入れるスクランブル布陣を強いられた。柏木も「正直、競って勝つのは難しい」ととらえる。ではどうすればいいか。すると「ロングボールを蹴らせないのが一番やね」と言う。

 「できるだけ前からプレスをかけにいく。普段やっている日本のチームは、少し遅らせれば蹴って来ないで、つないでくる。でも去年の松本のように、徹底して蹴られれば、うちは押し込まれる。しっかりプレッシャーにいかないから、蹴られて押し込まれる。GKから蹴られるならまだいいけど、DFラインまでボールが出てきたら、前線の全種が蹴らせないようにいかないと。そこだけは集中してやる必要がある」。

 今季は常にチームで走行距離がトップクラスと、最後まで運動量が落ちない柏木は「試合の流れの中で、オレが前に入って相手を追う形にしてもいいと思う」とも話す。前線の選手が疲れれば、オレが代わりに追ったる。ミシャ・プレス完全復活のため、そこまで覚悟を決めている。

 柏木は「やっとこの身体に慣れてきて、プレーの質や落ち着きが、試合の中で出せるようになってきている」とうなずく。

 筋力アップと体脂肪率の低下に並行して取り組み、しっかりと腹筋が割れた身体が出来上がった。感覚派だけに、新しい肉体に慣れるのに時間がかかったが、ここに来て身体とイメージのシンクロ率が高まった。

 「ボランチとして、どれだけ前で得点機にからめるかで、攻撃の厚みは変わる。それと同時に、攻撃の組み立ての部分では後ろに下がった方がいい。そのメリハリをつくっていけたら」

 肉体改造で球際の強さ、プレス時に前に出るパワー、そして運動量がアップ。横浜の司令塔MF中村が「あいつの圧力ハンパない」と認めるまでになった。守備時や前線に上がる際の力強さと、生来の繊細なパスワーク。相反する2つの顔を使い分け、柏木が屈指の強豪FCソウルを攻略する。