プレミアリーグの強豪アーセナルに完全移籍が決まった広島FW浅野拓磨(21)が、リオデジャネイロ五輪でメダルを獲得して特例ビザを取得する。4日、広島市内で会見し、1年目から世界最高峰リーグでのプレーを熱望した。だがA代表で実績がないため、英国で選手登録に必要な労働許可証取得が微妙。他国への期限付き移籍を避けるためにも、五輪で活躍し特例での査証取得を狙う。17日のホーム横浜戦が広島での最終戦となる。

 広島市内を一望するホテルで開かれた会見。浅野は欧州1年目からプレミアでのプレーを熱望した。

 「最初からアーセナルの環境でチャレンジしたい。(快足のイングランド代表FW)ウォルコットは世界最高のスピードを持っている。負けないようにする。(ドイツ代表MF)エジルと組んだらどうなるのか。ワクワクしながら『パスをくれ』という気持ち」

 広島が得た移籍金としてはクラブ史上最高となる推定380万ポンド(5億3300万円)。関係者によれば4年契約の年俸45万ポンド(6400万円)で移籍が決まったが、英国での登録には高い壁がある。過去2年のA代表で基本的に75%以上の出場実績が必要で、昨夏に代表デビューした浅野は5試合に出場しただけ。現時点で労働許可証取得は微妙。取得できなければ、11年に宮市(現ザンクトパウリ)がアーセナルからオランダ・フェイエノールトに貸し出されたように、他国に期限付き移籍となる。

 一方で、リオ五輪でメダルを獲得すれば特例ビザが発給される可能性が高まる。広島の織田(おりた)社長は「特例をやる(申請する)ようです。ベンゲル監督が自ら(政府に)動くと聞いている」と説明。五輪の活躍で世界にアピールすれば、A代表の主力と同等レベルと判断され、特別で労働許可証が発給された例もあるという。

 初の海外で「英語は赤点ギリギリ」「ホームシックになるのも計算済み」と不安ばかり。それでも「五輪もW杯も、出るだけじゃなくメダルを取る。日本代表のエースになりたい」と強気だ。17日横浜戦が広島での最終戦。大きな野心を抱く21歳が、ビッグクラブの扉を開く。【益子浩一】

 ◆浅野拓磨(あさの・たくま)1994年(平6)11月10日、三重・菰野(こもの)町生まれ。四日市中央工から13年広島入り。3年目の昨季にJ1初ゴール含む8得点を全て途中出場から記録し、新人王にあたるベストヤングプレーヤー賞を受賞。国際Aマッチ5試合1得点。171センチ、70キロ。