浦和GK西川周作(29)がJリーグ史上初の「GKによる2試合連続アシスト」を記録した。後半42分、自陣からのFKの場面で、最前線へ約60メートルのロングパス。これをズラタンが最終ライン裏に抜け出しながら受け、飛び出してきたGKの頭上をループシュートで破った。

 前節湘南戦でも、ラインを高く取る相手の戦術、そしてボールが走りにくいピッチ状況を計算したキックで、MF関根の先制弾をアシストしていた。

 2試合連続のアシストに「(完封の)おまけみたいについてきた感じですけど」と笑いつつ「相手の構え方と、ズラタンの特徴に合わせて蹴り分けたボール」と意図を明かした。

 前節のアシストもあり、名古屋の最終ラインは西川がボールを持つと、警戒してラインを下げていた。

 「だからボールを手前に落とせば、ズラタンには通る。特に彼はフィジカルコンタクトが強いし、足元もうまい。手前に落とすか、相手と五分五分の場所に蹴れれば、コントロールできると思っていました」

 1メートルほど高さをおさえ、ロングキックを相手の胸元へ。思惑通り、ズラタンはDFに身体を強めに当てて、競り合いでの主導権を握った。そのまま裏に抜け出し、相手にボールを触らせないまま、ループシュートまで持ち込んだ。

 西川を起点に、自陣からテンポよくグラウンダーのパスを回していくのが、浦和の基本的な戦術。「だからこそ、シンプルに前線を狙う自分のキックが生きるのだと思う」と守護神は言う。「つなぐ中で、いつ狙うのか。今日はずっとキックの感触がよかったし、駆け引きを楽しみながらプレーできた」とうなずいた。

 この日もキックの精度は圧倒的な存在感をみせた。プレー中はもちろん、前半終了直後には、ボールをダイレクトボレーで50メートル先の主審へ返した。ライナー性のキックは、相手の胸の真正面へ。あまりの正確さに驚いたのか、主審はボールをファンブルし、顔に当ててしまった。

 守備時には、ペナルティーエリアを10メートル以上も飛び出し、相手からボールを奪う場面もあった。その相手をドリブルでかわし、前線にパスを送る姿は、まさに「11人目のフィールド選手」。この日初めて浦和を視察した、日本代表のルグシッチ新GKコーチにも、攻撃的なスタイルを見せつけた。

 埼玉スタジアムのグラウンドキーパーは「西川選手がここに来てから、ゴール近辺の芝が痛まなくなった」とスタッフに明かすという。普通のGKは常にゴールエリア付近に構える。地面に強く踏み込むロングキックも、その「守備範囲」から行うことが大半だ。

 西川は違う。自軍の高い最終ラインの後方を広くカバーし、ロングキックも高い位置から蹴る。だから、特定の位置の芝を痛めつけてしまうことがないのだ。

 今季の通算失点は、全チーム最少タイの21。加えてGKによる2試合連続アシストで、相手はこの日の名古屋のように、ラインを下げざるを得なくなる。前に出てくる力をそぐことで、さらに失点のリスクは減ることになる。

 ピッチにやさしいが、相手には攻守にとことん手厳しい。そんな守護神が、年間勝ち点1位を目指す浦和を、力強く引っ張る。