浦和MF武藤雄樹(27)が、競技の枠を超えた「すしキャラ争奪戦」に打って出る。「すしキャラ全開なんですよね」と言及したのは、野球界のライバルについて。プロ野球日本ハムのレアード内野手が「すし」を握るパフォーマンスで人気を博していると知り「僕でも聞いた事があるくらいだから、相当浸透しているってことですね」とうなずいた。

 武藤も自ら認める「すしキャラ」だ。前所属の仙台時代に端を発した「武藤がゴールを決めたらすしで祝う」という風習は、浦和加入後2年連続2桁得点の活躍もあり、浦和サポーターに文化として根付いた。

 昨年の第1ステージ無敗優勝時には、最終節の新潟戦で武藤が2得点したことから、さいたま市内のスーパーのパックずしが売り切れたという「伝説」も残している。メッシになぞらえた「スッシ」という愛称も、一部サポーターでは広まっているという。

 DF槙野の強い勧めで、得点後に即興のすしパフォーマンスを試みたこともあった。しかしこれが打ち合わせ不足から「不発」に終わったこともあり、野球界のライバルに付け入る隙を与えてしまった。

 レアードは今季ここまでリーグトップの39本塁打と大活躍。優勝を決めた28日の西武戦でも決勝弾を放ち、ベースランニングしながらすしを握るパフォーマンスが、ニュース番組のスポーツコーナーなどで繰り返し流れた。新聞紙面には、職人にふんしてカウンター内ですしを握る写真まで躍った。最強外国人選手の「すしキャラ」が、一気に市民権を得た。

 「持っていかれた」形になった武藤は「地上波の中継も多いですからね」と妙に冷静に分析した。そして世間の注目度が高まるリーグ終盤戦の優勝争い、そしてTBSが浦和の試合を5年ぶりに地上波生中継する1日のG大阪戦を、巻き返しのチャンスと位置付けた。

 「レアード選手も優勝に貢献しているからこそ、キャラが定着した。僕もチームの優勝につながる結果が出せれば、おのずと『すしレアード』だけじゃなく『すし武藤』もいるとアピールできる。最近は試合前にすしを食べて、僕の活躍を祈るというパターンができたとも聞きます。それは僕としては申し訳ない限り。もっとコンスタントに結果を出して、ゴール後にすしを食べてもらえるようにしないと」

 キャラトークが笑いを誘うが、本人はいたって真剣に、G大阪戦での勝利につながるゴールを誓う。昨季リーグチャンピオンシップ準決勝G大阪戦では、同点の後半ロスタイムに訪れた決定機で、ヘディングシュートがGK正面を突いた。延長で敗れた遠因となった、悔しいシーン。今も残る苦い思いを払拭(ふっしょく)するためにも、サポーターを「すし祭り」にいざなう一発をたたき込む。【塩畑大輔】