YBCルヴァン杯決勝が今日15日、埼玉スタジアムで行われる。タイトルを争う浦和とG大阪の「因縁」は、1日のリーグ戦でも生まれていた。決勝の舞台と同じ埼玉で浦和が4-0と大勝したが、試合中に浦和MF阿部勇樹(35)がG大阪MF遠藤保仁(36)に背中を蹴られた形になり、11日に肋骨(ろっこつ)骨折が判明した。両主将も激しくぶつかり合った一戦から2週間。ナビスコ杯から改称後最初の王者を目指し、再び激突する。

 決勝前日の公式会見。阿部は「ここにいるということは、明日は大丈夫なんじゃないのかな」とにやりと笑った。1日のG大阪戦の後半9分、G大阪MF遠藤に後ろから倒された。よくある場面にも見えたが、なぜか脇腹を押さえてのたうち回った。それもそのはず、リプレー映像には右足キックを背中にまともに受けている様子が映っていた。

 そのまま試合終了までプレーを強行し、5日のルヴァン杯準決勝東京戦もフル出場。しかしその後の検査で、右肋骨の骨折が発覚した。それでも今週に入ると「もう大丈夫」と話し、14日の公式練習でも主力組でプレー。G大阪との再戦となる決勝での戦線復帰が確実になった。

 とはいえ、当初はボールを軽く蹴っただけで患部に響き、うめき声を上げるほどだった。痛みが軽減されても、常人なら接触プレーなどには恐怖が伴うところ。しかし「怖さなんかないです。だってもう折れちゃってるから。それ以上はない」と事もなげに話した。

 「肋骨のリベンジをしないと。肋骨も納得してくれない」。そう笑ってみせるが、もともとG大阪への雪辱は宿願だ。タイトルを懸けた直接対決で、何度も煮え湯を飲まされてきた。今年は元日の天皇杯決勝でも敗れた。試合後、阿部は取材エリアに最後まで残って記者に対応し、涙をこぼしながら再起を誓った。

 だからこそ、決勝には負傷をおして出場する。当初この日の公式会見は「主将同士」とテーマ設定され、G大阪側から因縁の相手、遠藤が出てくると伝わってきていた。しかし、実際にG大阪から出席してきたのはMF倉田。理由は定かではないが、阿部と浦和側が想定していた“前哨戦”は幻になった。だが、それでいい。2強をめぐる因縁の決着の地には、6万人が見守るピッチこそがふさわしい。【塩畑大輔】

 ◆ルヴァン杯 今年6月にナビスコ杯から改称されたJリーグのカップ戦。決勝トーナメントは1次リーグ突破の4チームとACL出場4チームの計8チーム。準々決勝と準決勝はホームアンドアウェー方式で、2試合の勝利数が多いチームが勝者となる。決勝は1試合のみ開催。