浦和FW李忠成(30)が大舞台での強さを発揮し、クラブに10年ぶりの国内タイトルをもたらした。G大阪との決勝で、0-1の後半31分から途中出場すると、わずか22秒後にファーストタッチとなるヘディングシュートで同点弾。日本代表として出場した、11年アジア杯決勝オーストラリア戦での延長戦決勝弾を思い起こさせる活躍で最優秀選手に輝き、浦和サポーターが多く詰め掛けた会場を歓喜の渦に巻き込んだ。

 後半31分。李は交代出場のピッチに走りだすと、そのままMF柏木のCKに備えて、ゴール前に位置取った。「来いと思った。来ると信じていた」。ヘディング一閃(いっせん)。貴重な同点弾に、地響きのような歓声が起きた。

 いつもの流れるような攻撃が影をひそめ、チームは苦戦を続けていた。やはり大一番では勝てないのか-。そんな会場の雰囲気を、出場から22秒で変えた。

 PK戦での勝利後、李はインタビューで言い切った。「ヒーローになると決めていた」。11年オーストラリア戦決勝弾の時と同じセリフで再び大歓声を浴びた。

 昨年の天皇杯準決勝柏戦の延長決勝弾。今季ACL決勝トーナメント1回戦、FCソウル戦の延長後半の同点、逆転弾。劇的ゴールを決め続ける勝負強さの裏には、ある思考法がある。

 プロゴルファー石川遼あてに、知人を通しメッセージを送ったことがあった。石川は腰痛で長期欠場を余儀なくされていたが「遼くんはきっと他人にはできない大きな事を成し遂げるために生まれてきた人。だからそれにふさわしい振る舞いを続ければいい。そう思えば目先の結果にとらわれず、努力を続けられると思うんです」と言った。

 李自身も、自分にそう言い聞かせてきた。4月のリーグMVPも、最近はMF高木の台頭を受け、先発の機会がほとんどなかった。しかし、そんなことは関係がない。「大事を成すにふさわしい自分であるべき」。そう考え、最善の準備を続けてきた。だからこそ大舞台にも臆せず、1分もかからずに大仕事を成し遂げた。「神様がくれたゴール」と李は言った。しかしその幸運は、自ら引き寄せたものだった。【塩畑大輔】

 ▼決勝で途中出場ゴール 後半31分に途中出場した浦和FW李が、交代直後の同じ後半31分に同点ゴール。ルヴァン杯の決勝で途中出場選手の得点は6人目だが、交代出場の時間と得点の時間が同じだったケースは今回の李が初めて。

 ▼決勝で途中出場MVP MVPの李は試合途中からの出場。昨年までの計23大会のMVPはいずれも先発出場選手。途中出場でのMVPは24回目で初めて。