プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月1日付紙面を振り返ります。1998年の即売28面(東京版)は横浜F7発 点稼ぎ 消滅決まって怒りのチーム新でした。

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<J1:横浜F7-0C大阪>◇第2ステージ第14節◇1998年10月31日◇横浜国際総合競技場

 失業状態に陥った横浜Fイレブンが10月31日、ゴールラッシュを演じた。横浜Mとの合併が決まって以来、初めてのリーグ戦となったC大阪戦で、攻撃陣が爆発。FW吉田孝行(21)のハットトリックなどで、チーム新記録の7得点を奪った。来季もサッカーを続けるには、残された公式戦で最高のプレーをするしかない。他チームのスカウトにアピールするための真剣勝負が、横浜Fを変えた。

 殺気が漂った。試合前に横浜Fイレブンが、ピッチで準備体操を始めた。声を出す選手はいない。この試合にかける意気込みが、表情を硬くしていた。さらに闘志をかき立てたのが、大型ビジョンで写されたビデオ。Jリーグ創設時の1993年(平5)からの名場面が流れた。「僕は横浜Fが好きなんですよ」(三浦)。「残り試合を大切に戦いたい」(永井)。試合開始までに、全員が戦う集団に変身していた。

 開始1分、三浦が右肩を押さえながら倒れた。前半6分、波戸が右足首を痛めて顔をしかめた。肉弾戦でゴール前に迫った。気迫に満ちあふれたプレーは、C大阪の選手が止まって見えるほどだった。同8分に久保山からのパスを吉田が今季初ゴール。同24分には、山口がオーバーヘッドシュートを決めた。5点を奪ってのハーフタイム。サンパイオがゲキを飛ばした。「もっと点を取ろうよ!失点もゼロに抑えよう!」。今季の、いや横浜F創設以来最高のゲームをしようとした結果が、チーム新記録の一試合7得点。守備陣も緊張感を切らさず、無失点で終えた。

 エンゲルス監督は「選手はメンタル面で強くなっていた。ハートがあれば、今日のような最高の試合ができる」と話した。精神面が強くなったのは、残り試合で最高のプレーをする必要があるからだ。29日に横浜Mへの吸収合併が決まったため、来季もサッカーを続けられる保証はない。他チームのスカウトにアピールできなければ、もうJリーグではプレーできない。

 リーグ戦初のハットトリックを決めた吉田は「食べ物を戻したぐらい不安です。だから、試合に出てアピールするしかない。スカウトが来ているかもしれない」と力を込めた。

 Jリーグはあと3試合。天皇杯は決勝まで進めば5試合。8試合全勝することが、横浜Fイレブンができる最高のアピールだ。「いい形で勝ち進んで、天皇杯で優勝したい」(楢崎)。合併前の最後の真剣勝負が始まった。

 ◆新チーム選手構成 横浜Mが横浜Fを吸収合併して誕生する横浜FマリノスのA契約選手(480万円の年俸上限がない選手)は、横浜M18人、横浜F7人で構成される見通しとなった。両クラブの親会社だった日産自動車、全日空の出資比率に準拠した配分とみられる。横浜F関係者が31日、明らかにしたところでは、横浜Fの山田恒彦社長は既に選手を含むチームの関係者に選手比率の見込みを話したという。

※記録や表記は当時のもの