浦和が磐田に1-0で勝ち、最終節を待たずして第2ステージ(S)優勝を決めた。J1残留を争って守りを固める磐田を攻めあぐねても焦らず試合を運び、後半27分にMF武藤雄樹(27)が決勝点を挙げた。優勝した06年以来となるリーグ戦6連勝、公式戦11連勝と、苦手としてきたシーズン終盤に無類の強さを発揮。年間勝ち点1位も守り、リーグ年間王者を懸けた11月下旬のチャンピオンシップ(CS)へ弾みをつけた。

 エコパスタジアムの秋空に、試合終了の笛が響いた。第2S優勝決定。しかし選手たちは、叫ぶこともなく静かに勝利の味をかみしめていた。「まだ終わっていない」。年間勝ち点1位を懸けた11月3日の最終節横浜戦、さらにはCSを見据えた。

 「失速の浦和」とやゆされてきたチームが、シーズン終盤に出色の強さを見せている。8月31日のルヴァン杯準々決勝神戸戦から、公式戦で11連勝。この間27得点5失点と相手を圧倒し続けてきた。

 リーグ戦では広島、G大阪ら宿敵との天王山。カップ戦では決勝トーナメント。大一番で勝ち続けてきたことも、快進撃に価値を加えている。昨季までは気持ちが入りすぎて、普段通りの戦いができずに敗れてきた。今年は違った。

 ルヴァン杯決勝の前々日にはFW興梠、DF那須、森脇、GK大谷が、ゴルフの日本オープンの会場を訪れた。自分たちの大一番のことを忘れてリラックスし、無心で親交のある石川遼を応援した。淵田社長は「去年までならきっと自粛していたと思う。そこまで自然体なら、きっと決勝は勝てる」とうなずいた。その予感どおり、PK戦にもつれる激戦を制し、10年ぶりの国内タイトルを得た。

 磐田戦の直前には、司令塔のMF柏木が髪の色を金色から銀色に変えた。連勝している験の良さを重視する考えもあるが、「オレは今よりもっと良くなれると思うとるから。みんなはちゃうの?」と意に介さなかった。

 磐田戦は守りを固める相手から、なかなか先制点が奪えなかった。昨年までなら焦って攻めに出て、カウンターで失点する流れ。だが今年は違う。後半27分。それまでドリブル突破の頻度を減らしていたMF駒井が、突如右サイドを切り崩し、中央への折り返しを武藤が決めた。

 駒井は「サッカーは90分の物語で、必ずチャンスは来る。今はそう確信できているんで、焦ることなんかないですよ」と言い張る。第2S優勝は、年間王者を目指す浦和に何かを担保してくれるわけではない。しかし戦いぶり自体が「今年こそいける」と期待させる。【塩畑大輔】

 ◆浦和レッドダイヤモンズ 1950年に中日本重工サッカー部として創部。52年に新三菱重工神戸サッカー部、64年に三菱重工サッカー部と改称し、65年から始まった日本リーグに参加。78年にリーグ、JSL杯、天皇杯で優勝し、史上初の3冠。92年に株式会社を設立し、三菱浦和FCと改称。96年から現チーム名。00年にJ2降格も1年でJ1復帰。03年にナビスコ杯優勝で初タイトル。06年に初のリーグ年間制覇、天皇杯優勝で2冠。07年にACL初優勝。今年はルヴァン杯を制覇。ホームタウンはさいたま市。チームカラーは赤。呼称は浦和レッズ。

 ◆年間勝ち点1位の行方 決定は11月3日の最終節に持ち越し。浦和は勝てば無条件でCS決勝へシードされる年間勝ち点1位が決まる。なお、ACLの出場権は来季も同大会の出場枠が現行方式のままなら、天皇杯の結果次第でリーグ年間4位も可能性が残る。