川崎FのFW大久保嘉人(34)が大粒の涙を流し、ピッチに崩れ落ちた。鹿島に敗れ、再び初タイトルの道は閉ざされた。両軍の選手が整列してもしばらく立ち上がれない。「悔しさとか寂しさとか…。このチームで最後に優勝したかった。全部が重なった」。

 今季リーグ戦11勝3分け3敗だったホーム、等々力で「下克上」を許した。年間勝ち点順位で上回り、引き分けでも決勝進出できるアドバンテージがありながら、逃した。鹿島には年間勝ち点で13差つけていたが、2位どころか年間3位が決まってしまった。

 川崎Fに来て4年。3年連続で得点王を獲得しても優勝争いができず、年末のJリーグアウォーズでは「優勝してみんなで出たい」と思い続けてきた。14年オフには複数クラブからオファーを受けながら「ここに来た時に目標にした優勝を達成していない」と川崎Fとの契約更新を選んだ。

 「得点王よりタイトル。みんなでシャーレを掲げたい」「得点王は3つ持ってるから」。そう言い続け、チームのため黒子に徹してきた。前線にいればチャンスは多いが、相手守備を惑わすためにもボランチの位置まで下がってプレーすることも少なくなかった。シュート数は昨年の105本から99本に減ったが、4年連続2桁となる15点をマーク。ストライカーとしてのエゴをそいでも決定力を保ち、攻守で献身した。

 すでに来季は東京でプレーすることを表明し、川崎Fで狙えるタイトルは8強入りしている天皇杯だけ。「違うタイトルだけどやらないと。最後は笑って終わりたい」。この日の涙は必ず力に変える。【成田光季】