浦和が万全のアウェー対策で10年ぶりの王座に就く。J1年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)の決勝第1戦は今日29日、カシマスタジアムで行われ、浦和(年間勝ち点1位、第2ステージ優勝)と鹿島(同3位、第1ステージ優勝)が激突。浦和はさいたま市内の練習場の芝生をカシマ仕様にカット。28日の最終調整も、敵地さながらのピッチで感触を確かめた。

 浦和の大原サッカー場は決戦2日前から2面あるピッチのうち1面が「カシマカット」になった。従来の芝生の刈り込み方向はゴールラインに対して平行だが、今回はたくさんのダイヤモンド模様が浮かんだ。斜めに進める芝刈り機の方向を一定間隔で変えることで緑色に濃淡をつけ、決勝第1戦のピッチを再現した。

 この2日間で一番乗りしたMF柏木は、ゆっくりとドリブルでセンターサークル付近を往復して感触を確認。この日は試合前日恒例の紅白戦も行われた。芝生の向きでボールの転がり方が異なり、ドリブルを武器にするMF駒井は「(ボールが)詰まったり流れたり、芝が変われば気になる部分はある。深さも気にする」。数ミリの傾きの違いがプレーに影響を与えることもある。

 現在のJ1クラブで芝生を斜めに刈り込むのは、鹿島だけ。かつて監督も務めたジーコ氏のアドバイスで取り入れられ、相手の距離感を狂わせることが目的とされる。カシマでの日本代表戦では施されず、鹿島がJリーグの試合でのみ導入する、地の利を生かした策だ。10年ぶりのリーグ制覇がかかる浦和は、自分たちの庭を敵地仕様に仕立て上げ、臨戦態勢に入った。

 12日の天皇杯4回戦の川崎F戦を最後に実戦から遠ざかった。一方の鹿島は準決勝を勝ち上がり、勢いづく。ペトロビッチ監督は「(鹿島とは)これまでも、どちらに勝利が転んでもおかしくない拮抗(きっこう)した試合をしている。チャンスは半々だ」と緊張感を漂わせた。短期決戦で試合巧者を制する備えは尽くした。【岡崎悠利】

 ◆16年CS決勝の大会方式 ホームアンドアウェーの2試合制。90分で勝敗が決しない場合は引き分け。2試合が終了した時点で勝利数が多いチームが年間王者となる。2戦終了時で勝利数が同じ場合は(1)2試合の得失点差(2)2試合におけるアウェーゴール数(3)年間1位チームの順で決定。敗者が年間2位となる。賞金は年間優勝が1億円、年間2位が2000万円。