浦和がまさかの逆転負けで、目前だったリーグ優勝を逃した。前半7分にFW興梠慎三(30)のゴールで先制したが、鹿島FW金崎に2失点。アウェーの第1戦で先勝しながら、年間勝ち点で15の差をつけた鹿島に2試合で優勝をさらわれる厳しい現実を突きつけられた。天皇杯も敗れており、失意のまま浦和のシーズンが終わった。

 浦和がまた悪夢を見た。無情の笛が響く。DF槙野は倒れ込み、MF阿部主将は天を仰いで立ち尽くした。前半7分にFW興梠のゴールで先制も、鹿島FW金崎に2点を許した。昨季はCS準決勝で、年間勝ち点9差をつけたG大阪に敗戦。勝ち越せる場面からカウンターを食らった。再び襲った悲劇。選手は涙を流しながらピッチを去った。PKを献上した槙野は「年間1位だろうが、ここで勝って証明しないといけなかった」と目を赤くした。

 悔やまれたのは同点とされた1点目の失点だった。カウンターからMF宇賀神が競り負けて右サイドからの突破を許し、DFが戻りきれずに失点した。DF遠藤は「すべては前半に失点したこと。1-1になったら相手に分があるのは予想していた。ゼロに抑えていたら結果は違った」と唇をかんだ。

 誰も口にしなかった違和感が、結果を分けた。1点の重みが違う。浦和が先制したが、1点を取ったところで、元から2点以上が必要な鹿島にはほぼ影響がない。逆に鹿島の1点は、浦和に大きなプレッシャーを与えた。ハーフタイムでも「点を取りにいこう」と話し合った浦和だったが、遠藤は「口で言うのと、実際に行動するのでは難しさはある。みんなそれは感じながらやっていた」と明かした。あと1点取られたら危ない。不安がよぎり、わずかに頭が守りに入った。いつもの攻撃的な姿勢が、少しずつ乱れた。

 ペトロビッチ監督はこの制度についての質問に対し「言い訳はしない」と2度断った上で、説明した。「年間34試合、1つ1つ積み重ねることに選手はとても労力を使う。リーグ最終節を終えてから、1カ月ほぼ何もない状態で2試合に(調子を)持っていかないといけないのは難しい」。指揮官はCS決勝が始まる前から、声高にこの制度に疑問を呈していた。懸念していた事態が、現実となった。【岡崎悠利】

 ◆07年の浦和 残り5試合時点で首位だった浦和は、3位の鹿島に勝ち点10差をつけていた。だが、鹿島が5連勝(第26節からは9連勝)したのに対して、浦和は△△△●●の3分け2敗と大失速。この年の浦和はACLを制したものの、リーグ戦と並行した連戦の影響でDF闘莉王ら故障者が続出。勝てば優勝が決まる最終節で、最下位が確定していた横浜FCに敗れた。この決勝点をアシストしたのはFWカズだった。鹿島が清水に3-0と圧勝したことで、リーグ連覇を逃した。この年の鹿島は最終節で初めて首位に立つという歴史的な逆転優勝。

 ▼年間勝ち点1位のV逸 年間勝ち点1位の浦和はCS決勝に敗れたことで、今季の最終的な年間順位は2位。勝ち点制が導入された95年以降、CSの開催は今回が9度目だが、そのうち年間勝ち点1位クラブのV逸は8度目(00年の柏は年間勝ち点1位もステージ優勝できずにCS出場を逃す)。昨季は年間勝ち点1位の広島がそのままCSも制して年間王者となったが、今季の浦和は04年に続くクラブ2度目の悲劇。