仙台の渡辺晋監督(43)は10日、ブンデスリーガとイングランド・プレミアリーグのクラブの視察へ向かうため、仙台駅を出発した。来季でJ1に限ればクラブ史上2番目の長さとなる就任4年目を迎える指揮官は、自身過去最長という18日間の日程で、本場欧州のサッカーを学び、体感する。自ら旅費を負担してまで視察を行う、その狙いと真意を監督に聞いた。

 ラフな格好で仙台駅に姿を見せた渡辺監督は、出発前に意気込みをこう語った。「ここ1、2年はアウトプットをし続けた。選手にいいものを提供できるようインプットして(チームを)パワーアップしたい」。S級ライセンスの研修以来3年ぶりの海外視察に、指揮官は心を躍らせた。

 世界を肌で感じて、昨季から続ける「堅守賢攻」を進化させる。「(就任1年目の)14年は残留のため引いて守った。それは簡単だ。でも優勝を目指すにはそれではだめだ。世界基準は前からプレッシャーをかけられるかが生命線。生で見てヒントにしたい」。そこで重視するのがトレーニング方法だ。「サッカーをするために必要なことを見たい」と基礎から学ぶつもりだ。

 中でもドイツが気になる。12年に前監督の手倉森誠氏(49)らと観戦したブンデスリーガのボルシアMGの試合に感銘を受けた。それ以来、ボルシアMGの試合映像を録画し、自身でダビング編集するほど入れ込んだ。1月のキャンプ中にはそれをテキストとしてミーティングを行い、チームに浸透させようとした。自ら「ドイツサッカー好き」と公言し「W杯でも結果を残しているでしょ。規律がはっきりしていて、その中でも個が輝いている。仙台も目指したい」と話した。視察するチーム名は明かせないが、英独ともに名門のクラブだ。

 クラブの今後も見据えている。現地ではファンともふれあう予定で、「その人たちにとってクラブはどういう存在なのかを知って、仙台に役立てたい」。施設環境などもチェックするつもりで、クラブ全体に還元すべく意欲的だ。

 来季はトップ5はもちろん、頂点を目指す戦いになる。優勝したらかなえて欲しいことを尋ねると、「選手を旅行に連れて行ってもらいたい。パレードもしたい」と夢は広がる。自らが旅費を負担して臨む欧州視察。渡辺監督の大きな覚悟が、仙台に歓喜をもたらす。【秋吉裕介】