鹿児島城西FW真田颯(はやて、3年)は、孤軍奮闘した。右肘は伸ばしたままに近い状態でピッチで走り回った。ただただ東福岡に勝ちたい。その一心で痛みは忘れていた。

 前日2日の2回戦(対長崎総合科学大付)で右肘を脱臼。途中交代してそのまま病院に運ばれ治療を受けた。なんとか関節は元に戻ったが、痛みは消えなかった。それでも「東福岡に負けるよりは痛みの方が耐えられる」と小久保悟監督(49)に出場を志願した。

 チームは0-3で敗戦。わずか1本しかシュートを打たせてもらえなかったが、その1本は真田だった。「東福岡にどうしても勝ちたかったんで」。前夜宿舎では午後11時近くまでアイシングを続け、なんとか立ったピッチ。勝利のために放ったシュートに思いを込めたが届かなかった。小久保監督は「真田は福岡は出身だし、気持ちが乗り移ったんでしょう」と最後まで戦ったFWをたたえた。

 前半30分すぎには、ゴール前にドリブルで切り込みシュートを打とうとした直前に倒された。PKか、と思われたが笛は鳴らず。ベンチもスタンドもざわついたが、真田は「もう少し早くシュートを打っていれば入ったかもしれない」と自分のプレーを悔やんだ。

 卒業後は自動車関係の専門学校に進む予定でサッカーは卒業するという。サッカー人生ラストゲームが選手権の対東福岡戦。右肘は思うように曲げられなくても最後まで戦った80分間は、真田にとって忘れられない一生の勲章になる。【浦田由紀夫】