佐野日大(栃木)が駒大高(東京A)を逆転で下し、初の4強進出を決めた。

 0-1で迎えた後半42分。FKの流れから、ペナルティーエリア内での競り合いを制すると、ゴール前左に詰めていたDF梅沢崚(3年)が左足を振り抜き同点弾。PK戦もちらつき始めた後半ロスタイム、FW野沢陸(3年)を起点にロングカウンターを仕掛け、最後はFW長崎達也(3年)の右足シュートで逆転。埼玉スタジアムの切符を手にした。

 佐野日大は「5-4-1」の超守備的布陣から、隙あらば鋭いカウンターを仕掛けるスタイルだ。海老沼秀樹監督(46)は順大時代、センターバックとして磐田の名波浩監督(44)ともプレーし、ユース代表やバルセロナ五輪日本代表候補にも選ばれていた。母校の佐野日大でコーチを経て、監督に就任。当初は攻撃的なチームを目指していたが、昨年6月の高校総体県予選・準決勝の矢板中央戦で0-3と完敗し方針を変えた。強豪校に勝つために、システムを「4-4-2」から「5-4-1」に変更。この戦術が奏功し、栃木県リーグ1部で優勝し、今大会で4年ぶりの全国切符を手にした。

 全国舞台でも、自陣に10人が引いて守る守備的スタイルを貫徹し、歴史を塗り替える「4強入り」を果たした。海老沼監督は「(矢板中央に)負けたからこそ今がある。勝って学ぶこともあるけど、負けて学ぶことある。10人が引いた中で崩すのは、スーパープレーでないとできないと言い続けてきた。それを選手たちが感じとって、表現してくれた。この場で出せたのは評価したい」と目を細めた。

 決勝点も、焦って前がかりになった駒大高の最終ラインのすきをつき、ロングカウンターを仕掛けて奪った。相手にボールを持たれる時間が長いだけに、前線は無駄走りが続くが、FW長崎は「自分たちより相手がうまいので、押されることは想定内。苦しいけど、自分たちがあきらめたら、支えてくれる仲間に申し訳ない」と話す。

 Jリーグを見ても、超攻撃的スタイルの強豪チームが、引いて守る相手に苦戦し、カウンターを浴びて敗戦するのはよくあることだ。日本代表でもW杯アジア予選で、引いて守る相手に苦しめられたことも記憶に新しい。準決勝は前橋育英(群馬)との対戦。勝ちにこだわるスタイルの佐野日大は頂点まであと2勝だ。